シングル男性の場合は親子参加のケースは少ないものの、「忙しい息子の代わりにセミナーに参加しました」「息子に内緒で相談にきました」などは、珍しいケースではありません。
娘や息子の立場のあなた、親御さんの気持ちを素直に受け止めていますか。人生の先輩ですから、この際、少々面倒でもアドバイスを聞き入れ、資金援助もありがたく受けてみましょう。
今回は、頑張り屋のP子さんのお話。でも主人公はP子ママです。P子さんは何でも一人でやってしまいたい、“できる”キャリアウーマンタイプ。マンション購入もP子さんにとっては例外でなさそうです。マンション探しから資金計画、契約、引越しまで、すべてを一人で乗り切ろうと奮闘中。P子ママの憂いを伺ってみましょう。
急に言い出したマンション購入
ある土曜日の夕食時間。P子さんが両親を前に切り出しました。「マンションを買おうと思って探しているの」。P子ママは、「あまりにも突然のことで状況がよく飲み込めなかった」と振り返ります。「どこで?」「いくら?」と物理的な条件に関する質問をするのがやっとで、肝心の「どうして?」と聞くことを思いつかなかったそうです。
「なぜ急にマンション購入なのかしら?」彼氏ができたとか、別れたとか。臨時の特大ボーナスが出たとか、そのような変化はP子さんには見受けられません。でも、どうも会社帰りや土日には、モデルルームなどを見学しているようで、マンションのパンフレットとおぼしきものを真剣に見ています。
P子ママは、P子さんの気持ちがわからず、娘が住宅ローンを抱えることも、一人暮らしをすることもとにかく心配。反対したい気持ちでいっぱいです。「何もマンション買って一人暮らししなくても、マンションを借りて一人暮らしを始めればいいじゃない」「お金はどうするの?住宅ローンは返せるの?」「いつまで働くつもりなの?」「結婚はどうするの?」ある日、P子ママは不安な気持ちを一気にぶつけてしまいました。ところが、P子さんはすこぶる冷静。「マンションを買いたいの。一人で何とかできるわ」。と言って自分の部屋へ。
「購入資金の援助をしたい」と言ったら、、、
それ以来、何度かP子さんのマンション購入が夕食の話題になりました。ですが、どちらからも遠慮と牽制が働き、核心に触れるにはいたりません。P子ママはP子パパと何度も話し合い、「P子が望むならば」とただ反対することはやめ、「資金援助という形でサポートしよう」との方針となりました。
そのことをP子さんに伝えると、意外な答えが返ってきました。「自分のマンションだから自分で何とかしたい」とP子さん。「喜んでくれると思ったのに、なんだか情けないやら、寂しいやらで。私よりも夫の方が落ち込んでいるようです。娘をサポートする良い方法はありませんか」と話して下さるP子ママの落胆ぶりも相当です。
贈与だけではない資金援助の方法
P子ママが考えていたのは、現金の贈与です。「父親の相続時に財産分与するよりも、父親が元気なうちに生前贈与し、P子の喜ぶ顔と購入したマンションを見たい」という思いを伝える作戦はあるでしょう。親から子への贈与には、相続時精算課税制度といって、条件が合えば贈与税の特例適用があります。
P子さんが、「贈与」をかたくなに拒絶するならば、親から子へ「貸し付ける」という方法もあります。親から借りて自分が返すのであれば、P子さんの気持ちもおさまるかもしれません。
他には、P子パパやP子ママが援助した資金に見合った分だけ、購入したマンションにパパやママの名義を入れる、という方法があります。この方法であれば、税務上も贈与ではなくなり合理的ですが、購入したマンションはP子さん単独の所有ではなく、P子パパやP子ママとの共有名義となるためP子さんの思いとは離れるかもしれません。
P子さんへ
親御さんから資金援助の申し出があるとは、なんと恵まれた立場でしょう。「自分でなんとかしたい」という気持ちも良くわかります。「家を出て行ってさびしい思いさせるのに、資金援助まで受けるなんて。そこまで迷惑はかけられない」そのような思いがP子さんにはあるのかもしれません。
なぜマンション購入をしたいのか、マンションを持つことが自分の人生を豊かにすること、賃貸よりも購入の方が良いと考える理由、将来に向けてのプラス要素など、自分の考えを丁寧に親御さんへ話しましょう。心配をかけたくないのであればなおさら、資金計画や返済プラン、将来のキャリアプランなども含めて話す機会を持つことです。
せっかくの親御さんからの申し出です。自分の思いだけで突っぱねるのではなく、P子パパとP子ママの気持ちを汲んで話し合いましょう。資金面のサポートを受けることも親孝行の一つです。