■退職日によって年金の取り扱いが異なる
転職のために会社を退職する場合、月末に退職日を設定するケースは少なくありませんが、たとえば31日までの大の月に、31日で退職する場合と、30日以前に退職する場合とではちょっとした違いが生じます。
厚生年金制度では、会社を退職すると同時に加入資格を失いますが、加入資格喪失日は退職日の翌日と規定されています。30日に退職すれば、資格喪失日は同じ月の31日ですが、31日に退職した場合、資格喪失日は翌日の1日となるわけです。
一方、資格喪失日が属する月の保険料は納める必要がありませんので、30日に退職した場合は、その月の保険料が給料から差し引かれることはありませんが、31日に退職した場合には、その月までの保険料を納めなければなりません。
ただし、月末以前に退職した場合で、そのまま失業状態に入れば、国民年金保険に加入し直さなければなりませんが、この国民年金への加入資格は厚生年金の資格喪失日にさかのぼって設定されることになります。つまり、退職した月の分は、結局は国民年金として納めることになるということです。
転職先を決めて退職した場合でも、退職した翌日には新しい会社で働き始める資格喪失日から勤務をスタートするのでなく、退職から入社まで数日を置くと、年金保険加入の空白期間が生じることになります。空白期間が1カ月以上に及ぶなら、いったんは国民年金に加入すべきですが、数日の場合にはその必要はないでしょう。
■厚生年金の資格は入社したその日に発生
厚生年金保険は、有限会社や株式会社などの法人であればすべて、それ以外の個人経営の商店などでは常時5人以上の事業所であれば強制適用事業所となります。このような強制適用事業所に転職したときは、人事関係の担当者から年金手帳の提出を求められることになるはずです。
厚生年金制度あるいは健康保険制度では、新たに人を雇用した場合には、その人が働き始めたその日が加入資格の取得日となり、資格取得日から5日以内に、社会保険事務所(組合健康保険の場合は組合事務所)に年金手帳や被扶養者届を添えて「被保険者資格取得届」を提出しなければならないと定めているからです。年金手帳と新しい健康保険証は、転職先での資格取得の事実を記載したうえで、会社あてに送り返されます。
このことから、転職先で入社5日目を過ぎてももなお年金手帳の提出を求められない場合や、入社後10日以上たっても新しい健康保険証と年金手帳を渡してもらないときは、会社が「被保険者資格取得届」の提出を怠っていることを疑ってもいいかもしれません。
また、厚生年金保険、健康保険とも、保険料は1カ月遅れの後払いとなっています。入社した月内に給料日がくる場合、最初の給料から保険料が差し引かれることはありませんので、給料明細を確認してみましょう。