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労働基準法を知ろう(第2回) 賃金支払いに関する5つの原則(2ページ目)

労働基準法の規定のうち、今回は、賃金に関する基礎知識をまとめました。ときに、「賃金支払いの5原則」について理解しておきましょう。

執筆者:西村 吉郎


賃金支払いの原則

労働基準法によって賃金と見なされるものについては、支払いに関して5つの原則が定められています。

【その1】通貨払いの原則
賃金は、金銭で支払わなければなりません。賃金の一部を現物支給したり、食事を支給した分について賃金から差し引くといったやり方は禁止されているわけです。

ただし、別途法令に定められているものや、労働組合と結ぶ労働協約で取り決めを行った場合には、現物支給も認められます。通勤定期券を現物で支給するとか、先述のように、賞与の一部を自社製品を提供することで替えるといったことなどです。

通貨ということですから、小切手で支払うことも許されません。小切手だと、不渡りになるおそれもあるからです。ただ、これにも例外として、退職金については、銀行その他の金融機関が振り出した自己宛小切手、銀行その他の金融機関が支払補償をした小切手、郵便為替など確実に本人に渡ることが見込まれる方法であれば認められることになります。多額の現金を直接渡されても状況として困る場合があることなどに配慮したものといえます。

ところで、今日では、給料支払いはほとんどの企業で金融機関への振り込みを行っています。これについては、通貨払いの原則などに抵触することになりますが、次の3点を満たすことを条件に認められています。

(1)労働者の意思に基づいていること
(2)労働者の指定する口座に振り込むこと
(3)給与支払日(午前10時頃まで)に引き出せること

実際には、「自分だけは現金でもらいたい」とか、会社指定の金融機関では自宅近くにないから、会社指定外の金融機関への振り込みをお願いしたいなどと申し出ても、事務手続き上の煩雑さなどを理由に断られるのがふつうです。とくに、給与振り込みを行う金融機関については、労使間で取り扱い金融機関について取り決めがあれば、会社指定の金融機関から選ぶしかないということになります。

【その2】直接払いの原則
賃金は、労働者本人に直接支払わなければなりません。たとえば、本人が未成年で、親が代理人として給料をもらいにきたといったケースで、親に給料を渡すのは違法となるわけです。ただし、本人が病気入院中であるなど給料日に出社できない事情がある場合には、生計を一にしている家族など「使者」に支払うことはできます。

本人に借金があって、債権者が代理人として給料を渡すよう求めることもありますが、このような代理人が支払いを求めても、渡す必要はありません。ただ、裁判所などの決定により差押さえを受けている場合、会社は支給総額の4分の1に相当する額まで、給料から控除のうえ、差押さえ債権者に支払うことになります。
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