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労働基準法を知ろう(第2回) 賃金支払いに関する5つの原則

労働基準法の規定のうち、今回は、賃金に関する基礎知識をまとめました。ときに、「賃金支払いの5原則」について理解しておきましょう。

執筆者:西村 吉郎


賃金支払いに関する5つの原則
労働基準法に定められる、賃金支払いに関する5つの原則を知っておきましょう。
『労働基準法』を知るシリーズの第2回は、賃金についてです。賃金というと、一般にはイコール給与ととらえられがちですが、法律にいう賃金には、毎月の給与以外にさまざまなものが含まれています。まずは、賃金とは何かを知るところから始めましょう。

賃金って何?

賃金に含まれるもの
労働基準法は、労働の対価として支払われるものはすべて賃金であると規定しています。会社から支給されるお金には、月々の給与のほかに賞与、手当、退職金、奨励金など性格ごとに異なる名称が使われていますが、どういう名称であれ、社員が労働したことに対して支給されるものは賃金であるということになります。

賃金と見なされることになると、当然、それについては所得となり、所得税や住民税が課されます。会社から支給されるお金が賃金なのかそうでないのかは、課税対象になるかならないかの判断にも直結するわけです。

わかりにくいものとしては、何らかの資格を取得したときに支給される資格取得報償金、解雇予告から30日未満で解雇となるときに支給される解雇予告手当、好成績を挙げたことに対する社長賞、慶弔金、災害見舞金、病気見舞金、お客からもらうチップなどが挙げられます。

このうち、解雇予告手当は明らかに賃金です。本来なら、解雇を通告してから少なくとも30日間は勤務を継続するのが原則ですが、即日解雇の場合などのように、その日数を減らすことの代償として、給与として支払う分を支給するものだからです。

資格取得報償金、社長賞は、会社に支給規定があってこそ支払われるものであるはずです。このように、就業規則などにあらかじめ支給条件が定められている場合には、会社に支払い義務が生じ、その金銭は賃金と見なされることになるわけです。

また、慶弔金、災害見舞金などは、一般には労働の対価としてではなく思いやりから支給されることが多いのですが、これらの支給規定が就業規則などに盛り込まれている場合、同様に賃金として扱われます。

ほかにも、社員の一部が社宅に住んでいて、残りの自宅通勤者には社宅を与える代わりとして住宅手当などが支給されることがありますが、この場合、社宅に住んでいる人にとっては、社宅に住めるという利益が賃金に相当すると見なされます。また、ときに賞与の一部として自社製品を提供するなど現物支給が行われることがありますが、これも、所定の方法で賃金に換算されます。

賃金とは見なされないもの
チップについては、そのお金をそのまま従業員がもらっていい決まりになっている場合には賃金とはなりませんが、それぞれが受け取ったチップを職場が一括して集めたり、サービス料などの名目で客から受け取って、それを従業員に一定の基準で配分している場合には、賃金として扱われます。

なお、出張に出たときなど実費弁済としての旅費交通費、接待の時の交際費などは賃金から除外されます。引っ越しを伴う転勤に際して支給される引っ越し代や旅費交通費なども、社会通念上相当と見なされる範囲であれば、賃金とはなりません。免許や資格を習得するために専門の教育機関に通うための受講費用も同様です。

慶弔金、災害見舞金などについては、とくに決まりはないが会社が恩恵的に支給するものであれば賃金から除外されることになります。
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