「先住民族」として認めるとは?
日本アイヌ民族の祭具であるイナウの写真。萱野茂二風谷アイヌ資料館。 |
昨年9月、国連総会で「国連先住民族権利宣言」が決議されました。条約ではないため国際法的な力はないものの、先住民族の自決権(3条)自治権(4条)伝統と慣習を維持する権利(11条・12条)資源に関する権利(27条・28条)環境に対する権利(29条)などを「先住民族」の固有の権利として保障するものになっています。
古くから北海道に住んでいた日本アイヌ民族が「先住民族」なのかどうか、議論は前からありました。日本が1996年に人種差別撤廃条約を批准したことをうけて制定されたアイヌ文化振興法ではその点の明記がありませんでしたが、ここにきて、国会や政府もアイヌ民族が日本の「先住民族」であることを認めることになったのです。
日本のアイヌ民族の苦しみ
日本アイヌ民族の人たちは、明治時代からいわれのない差別を受け続けていました。現在でも、その苦しみは解消されたわけでは決してありません。日本アイヌ民族の公式組織「北海道ウタリ協会」のサイトによると、全国民では7割にのぼる第3次産業に従事している比率がアイヌ民族ではわずか4割程度。また、2006年のアイヌ民族の大学進学率もわずか17.4%です。現在でもアイヌ民族の人たちの苦しみは続いているのです。
政府・与党内部には先住民族であることを認められたアイヌ民族の人たちが自治権や財産権などを要求するのではないかという警戒感があるようですが、それよりも前に、国は先住民族である日本アイヌ民族の人たちの権利擁護についていっそう努力すべきであるようです。
ちなみに、「北海道ウタリ協会」がなぜ「アイヌ」を名乗らないのか。それは名乗ることによって差別が発生することを恐れていたからで、1997年の時点でさえ、それが理由で「アイヌ協会」への改称が見送られています。
しかし来年から「北海道アイヌ協会」への改称が決定、国から認められた先住民族として動きを活発にしていくとみられています(アイヌは神に対する「人間」という意味、ウタリは「同胞」という意味)。
■関連サイト チベット政治の基本について知る一問一答
サミット参加首脳1 カナダ・ハーパー首相 ※カナダの先住民族についても記載。