2ページ目 【イタリアの政治システム基礎知識】
3ページ目 【混迷続ける最近のイタリア政治情勢】
イタリアの国民投票制度
イタリアの州境と主要都市。 |
また、5万人以上の有権者による法律発案制度も憲法に明記されています。
ただし租税や予算、大赦など減刑、外国との条約については認められていません。
このことは共和国憲法当初から規定されていたのですが、実施するための法律制定は長年棚上げされていました。そのため実際にこの制度が機能したのは、人民投票法が施行された1970年代からとなります。
これによって国民投票にかけられた案件は現在まででおよそ50件に上り、中には選挙法の改正など、重要事項が決定されたりしています。
第2次プローディ政権の崩壊
さて、最近のイタリア政治情勢についてお話ししましょう。2006年の総選挙で、中道左派連合は僅差で勝利し、第2次プローディ政権が発足しました。しかし、10を超える党派の連立政権は不安定なものでした。
2007年2月、アフガニスタン駐留継続承認をめぐり、上院与党議員の一部が造反したため、首相はいったん辞表を提出。しかし、ナポリターノ大統領がこれを受理せず、国会で内閣の信任を問う投票を行うよう要請しました。
この結果信任投票が行われ両院で可決、プローディ首相は続投することになりました。しかしこのことは、連立与党の厳しい政権運営を物語るものとなりました。
そして今年に入り、マステッラ法相夫人が汚職で逮捕されたことから、政権は再び動揺していきます。マステッラ氏は法相を辞任し、同時に自らが率いる中道政党「欧州民主同盟」(UDEUR)を連立政権から離脱させます。
政権離脱の理由は「疑惑が発覚した際、擁護してもらえなかった」(読売新聞)という何とも……な理由でしたが、これによって連立政権は下院で14議席、上院で3議席を喪失。連立与党と中道右派連合の上院での議席差はわずか1議席で逆転してしまいました。
上院で少数派となった連立与党は、またも内閣信任を上下両院に求めることになってしまいます。しかし、1月末に上院は信任案を否決。首相辞任となってしまいました。
大統領のあっせん失敗、解散総選挙へ
解散時のイタリア国会勢力図。 |
野党の中道右派連合は早期解散・総選挙を求める一方、与党は選挙法の改正ののちに総選挙すべきだと主張しました。
なぜなら、今のイタリア政治が不安定極まりないのは完全比例代表制になったからだということで、実際今回は小政党の動向一つで政権が崩壊したわけですが、そのため与党は小選挙区制との並立にもどし、小党乱立をなくすべきだとしていました。
結局与野党の折り合いはつかず、大統領は解散総選挙に踏み切ることに。2月6日に上下両院とも解散され、4月の13・14日に総選挙が行われることになりました。
次期イタリア首相はだれか?
前与党の中道左派連合は、新しく生まれた左派最大政党民主党を中心にして、民主党党首ベルトローニ・現ローマ市長を首相候補に選挙戦に挑むことになります。ベルトローニ氏は旧二大政党だった旧イタリア共産党系では最大の政党だった左翼民主党の書記長だった左翼の大物。閣僚歴もあります。古い政治家ですが、民主党が行った大々的な党首である書記長選挙(有権者300万人以上が参加)で当選したように人気はまずまずです。
対する中道右派連合は、またもフォルツァ・イタリア(FI)党首・ベルルスコーニ元首相を立てて政権奪回をめざす構え。
ベルルスコーニ氏もまた「古い顔」なのですが、イタリアのメディア王として君臨、知名度は抜群。1998年に汚職で有罪判決を受けてなお、2001年には首相に就任しているという「人気」もあります。
いまのところ中道右派がやや有利との情勢ですが、総選挙はまだまだ先。これからどうなるか、目が離せないところです。
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