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日曜日の政治用語 国民保護法

2004年に制定されたものの、国民の多くが「知らない」国民保護法。国家に「なにか」があったときの有事立法の1つです。あなたもなにか、協力させられるかもしれませんよ。

執筆者:辻 雅之

(記事掲載日/2007.09.23)

今週の政治用語解説は「国民保護法」についてです。最新の内閣府調査で、国民保護のしくみについて「知らない」人が7割いる、ということですが、いったいどういう内容の法律なのでしょうか。

有事関連法として制定

2001年のアメリカでの「9.11」テロ、2002年の北朝鮮による核兵器開発の発覚などを通じて、日本周辺の国際的緊張は高まりました。

しかし、日本にはそうした「有事」の際、国や自衛隊、地方公共団体などが何をするか、具体的法律がありませんでした。そのため、当時の小泉政権は、有事関連法案と呼ばれる法案を次々に成立させていきました。

まず2003年に「武力攻撃事態対処法」「改正安全保障会議設置法」「改正自衛隊法」の3つが「有事関連3法」として成立しました。

しかし、これらの法案には国民の保護に関する法律がなかったため、野党は反発し、早急な法案整備が求められるようになりました。

そして2004年、他の「有事関連7法」と同様に、「国民保護法」が成立、国や地方公共団体の国民保護に対する責務が明確化されました。

国・地方公共団体の「国民保護」

武力攻撃に対処するため、国は警報を発令し、都道府県がこれを市町村に伝達、市町村が住民に警報を伝えることになっています(第44~46条)。

とはいっても、非常に切迫した状況でこのような「伝言ゲーム」がうまく機能するかどうかわかりません。そのため、各地の放送局が、この警報をすみやかに伝えるよう規定しています(第50条)。

ほかにも、防災無線の活用、携帯電話やインターネットの活用なども求められるところでしょう。

避難指示は、国から伝達を受けた都道府県が行うことになっています。しかし実際に指示を伝達し、住民を誘導するのは市町村となっています(第52条~54条)。市町村の責任、けっこう重大です。

救援についても、国の指示を受けて、都道府県が中心になって行います。ただし、指示を待つ前に救援活動を行うこともできます。救援の仕事の一部を市町村に任せることによって、市町村が救援協力をします(第75~76条)。

このようなことを考えると、地方公共団体はしっかりした警報発令・避難・救援プランを持っていなければなりません。あなたがお住まいの市町村のプランを、チェックしてみるのもいいかもしれません。

実際、このようなことに備えて、2005年11月には福井県で、2006年には鳥取県で、住民も参加する形の訓練が行われています。しかし、まだまだごく一部の地域で行われているに過ぎません。

国民保護法における国民の「協力」とは?

国民保護法では、同時に国民が国民保護活動のなかで「協力」することも求めています。

救援の際、都道府県は住民に対して援助を求めることができることになっています。さらに、救援の際に必要な医薬品や食品などの物資の保管を業者に命令し、確保することができるようになっています。(第80条・81条)

さらに、避難住民のための土地を確保したり、医療を行うため、住民の土地や家屋などの使用をすることができます。これはあくまで同意の上なのですが、「正当な理由がないのに同意をしないとき」には、同意は必要がないとされています(第82条)。

市町村にも、武力攻撃が起こっている緊急事態のなかで、応急的に住民の土地や建物などを利用、または除去などを行う権限が与えられています(第103条)。

もっとも、このようなことで損害を被った住民に対しては、損害補償をするべきことが規定されています(第159・160条)。

このように、「有事」の際には国民の権利、とくに財産権などが一部制約されてしまう、ということを国民の側がしっかり認識しておかないと、いざ、というときに、トラブル続きで、あまりこの法律が訳に立たないことになるかもしれません。

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