2ページ目 【韓国の国会と政党……政界再編はあるか】
3ページ目 【韓国政治情勢──2007年大統領選に向けて】
韓国政治の象徴? 地域主義
韓国の地方行政区分。慶尚道(キョンサンド)と全羅道(チョルラド)の地域対立はよく語られるところだが…… |
特に、慶尚道(キョンサンド)と全羅道(チョルラド)の対立は激しいといわれてきました。支配する慶尚道、支配される全羅道という構図です。実際、かつては首相ポストを慶尚道出身者が独占したり、慶尚道だけ公共事業が進んでいると批判されることもありました。
韓国を代表する政治家、金大中(キム・デジュン)前大統領は全羅道の出身で、ある意味全羅道の希望の星でした。彼が大統領に当選した1997年選挙では、全国投票率は40%ほどでしたが、全羅南道での得票は実に90%を超えていたのです。
そして金大中政権になると、今度は全羅道の開発が優先されるようになった、逆差別をしているなどと批判されるようになります。このように、20世紀末までは、韓国の地域主義は政治に少なからぬ影響を与えてきたのです。
インターネット政治と地域主義の終えん
しかし、この地域主義は徐々に影を潜めつつあるといえるでしょう。それは、韓国において大きく普及したインターネットの影響があるといわれます。一時は日本よりはるかに先行して普及が進んだといわれる韓国のインターネットですが、これによってインターネット文化、インターネット言論が盛んになり、次第に地域単位の主張は影を潜めていきました。
2002年、盧武鉉大統領が当選したときの選挙では、地域よりもむしろ年齢による投票行動の差異が目立ちました。インターネットを利用する若い有権者たちが、積極的に盧武鉉に票を投じたのです。
このような現象は、その後のウリ党の躍進にもみられました。「ネティズン(ネット市民)」という言葉が作られ、彼らの積極的なネットでの言論活動が、世論そのものを動かしたといわれています。
現在の韓国大統領選に向けた主要候補予定者の支持率をみても、かつてのような地域感情はあまり入っているとはいえないようです。韓国でのネット普及は、根深い地域対立を終わらせる役割を果たしているのでしょうか。
2007韓国大統領選・主要候補者たち
このところの盧武鉉政権やウリ党への支持率低下を受け、今回は保守系候補が有力なのではないかといわれています。もっとも選挙では何が起こるかわからない、これは各国共通のことですが。現在もっとも支持を集めているのがハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)です。彼は元ソウル市長で、そのときの行政手腕と、庶民的な人柄が好感されている形です。主義主張は異なりますが、石原慎太郎や田中康夫といった感じの個性的でわかりやすい政治家だといえるでしょう。
これに次ぐのが、同じハンナラ党の朴槿恵(パク・クネ)です。60年代~70年代と長期軍事政権を担当した朴正煕(パク・チョンヒ)の娘で、伝統的な保守政治家です。慶尚道出身であり、国会議員として活躍、ハンナラ党の党首にまで就任(大統領選立候補のため退任)したところも、ある意味「伝統的」といえるかもしれません。暴漢に襲われたこともありますが、その後の毅然とした態度は一時好感を持って迎えられました。
ハンナラ党は、他の候補者も含め、8月19日に予備選を行い統一候補を決定することになっています。
旧ウリ党系からは、首相・閣僚経験者らが立候補を表明していますが、いまのところ支持率は非常に低く、今後統一候補をたてることができるかどうか、その場合支持率が浮上していくのかが大きな注目点となります。
2008年からの韓国政治はどうなる?
12月に迫った大統領選、韓国市民は誰を選ぶ? 写真:TravelLoverより |
伝統的な保守政治家である朴槿恵は北朝鮮に対する強硬姿勢を打ち出しているのに対し、李明博のほうは、ある程度韓国の人々が容認している北朝鮮への宥和政策に配慮を見せ、ある程度の対話・協力路線を打ち出しています。
外交でも李明博が6ヵ国協議枠内の協調を重視、朴槿恵が対米関係強化を重視している点で、2人は好対照といえます。
景況観がよくないものの、GDP成長率が5%を上回っている韓国では、経済問題が大きな争点になることはなさそうです。果たして北朝鮮への対応が大きな争点になるのか。今回の選挙で韓国の「ネティズン」たちはどう動くのでしょうか?
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