文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
2008年度の貿易統計速報(通関ベース)は、第2次石油危機以来28年ぶりの貿易赤字に転落。与謝野馨財務・金融・経済財政相いわく、「深刻に受け止めなければならない数字」です。「貿易赤字」の基本、日本が抱える問題点そして今後について考えてみましょう。<INDEX>
貿易赤字とは(1P目)
家計への影響(1P目)
「28年ぶりの貿易赤字」の深刻さは(1P目)
海外景気に左右される、日本の貿易収支(2P目)
「輸出立国ニッポン」の行く末は(2P目)
内需拡大で消費者力がアップ(2P目)
貿易赤字とは
2008年度は、原材料の値上がりと世界的な景気悪化による輸出不振で、貿易収支が赤字に |
2008年度は、日本による外国製品購入額が、外国への販売額より多かったということです。
1980年以来、貿易額の差し引きで日本は輸入より輸出が多く、貿易黒字が続いていました。2008年は、夏ごろまでは原材料の値上がりで輸入額が増え、年度後半は世界的な景気悪化による輸出不振で、貿易赤字となったわけです。
2008年度の輸出額は、前年度に比べて16.4%の減少。2ケタの伸びが続くほどの好調だった中国向け輸出ですら、一転して10年ぶりの赤字になりました。主要な輸出先の米国、欧州連合(EU)、アジア向けはいずれも前年比2ケタのマイナス、大幅減です。
家計への影響
「貿易の統計なんて、自分たちの生活にはあまり関係ないのでは?」と思っていませんか。輸出額の減少は、家計にも大きな影響を及ぼします。輸出が減り輸出企業の収益が悪化すると、雇用が減ります。その結果、個人消費が落ち込み、輸出に無関係と思われがちな内需型企業にも業績悪化は飛び火します。
企業は収益が悪化すると、工場建設や機械購入などの設備投資を控えます。すると、建設会社や機械メーカーに業績悪化が波及、物流も減ります。資金も循環しないために金融にも波及、さまざまな業界に悪影響が広がります。
言うまでもなく、悪影響が及んできた企業の従業員に、雇用問題や収入減少などが襲ってきます。
「28年ぶりの貿易赤字」の深刻さは
このようなことから、「28年ぶりの貿易赤字」で改めて日本の景気後退が心配され、「深刻に受け止めなければならない」となったわけです。しかし、これは2008年度、過去の数字。企業業績に絡む話は、2009年度や2010年度がどうなるか、が焦点です。今から輸出企業への悪影響が再燃するとは考えにくいでしょう。
2008年度の月間の貿易収支では、8月から1月までが9月を除いて赤字。2008年度を通しての貿易赤字は、既に視野に入っていたといえます。速報値ではありますが、2月、3月はそれぞれ単月で黒字に転じています。むしろ、足元では「貿易収支が底入れした」と見てもよさそうです。
そのため、年度ベースでの貿易赤字は、サプライズなニュースではないといえます。だからと言って、このままでも楽観はできません。その理由を、次のページで解説しましょう。