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2006年アメリカ中間選挙に注目!(2ページ目)

11月7日はブッシュ政権2期目の節目となる中間選挙が行なわれます。中間選挙とはいったい何? どんな影響があるの? もちろん大きな影響があります。2年後の大統領選もみすえて解説していきます。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【まずはアメリカ議会の基礎知識を学ぼう】
2ページ目 【中間選挙と大統領・大統領選との密接な関係】
3ページ目 【2006年中間選挙がもたらす影響とは、果たして?】

【中間選挙と大統領・大統領選との密接な関係】

中間選挙で大統領の政党が負けるとダメージは大

ブッシュ大統領
中間選挙で共和党が負けると、ブッシュ大統領の力も衰えてしまう。(Photo From Wikimedia Commons in public domein)
大統領制のアメリカでは、大統領が圧倒的な権限を持っているようにみえてしまいますが、必ずしもそうではありません。

アメリカでは、議会が法案の作成から制定まで、立法のほとんどのプロセスを独占しています。大統領が議会に予算や法案を提出することはできません。

大統領は、議会に対して「教書」というものを送り、望む法案や予算を成立させるようお願いすることができます。しかしあくまでお願いですから、議会を拘束することはできません。

ですから大統領の政党(ブッシュ大統領は共和党ですね)が議会で多数派を占めているかどうか、というのは大きな意味を持っているわけです。

ですから中間選挙で大統領の政党が負けてしまうと、大統領は残り2年間、議会に対して大きな力をふるうことができないおそれがでてきます。そういう意味で、中間選挙の意味合いは大きいのです。

特に大統領の政党と議会での多数派政党が異なってしまうと(これを「分割政府」といいます)、大統領の力は極端に衰えてしまいます。

大統領は議会に対して、議会が制定した法案を拒否する権限(法案拒否権)という強力な権限を持っていますが、これも分割政府の状態だからといっておいそれと行使することはできません。

たとえば、任期8年のうち6年が分割政府状態だったクリントンが、大統領任期中に拒否権を行使した法案はわずか37にすぎませんでした。

次回の大統領選挙を占う中間選挙

中間選挙は、2年後に行われる大統領選挙の行方を占う意味でも注目されます。

普通に考えても、大統領選挙の直近の国政選挙の結果が、大統領選に反映されるだろうことはよくわかりそうなものです。

さらに、過去の中間選挙のデータをみると、中間選挙と大統領選挙のかかわりが大変よく見えてきます。下の表を見てください。


中間選挙と大統領選の関連
◎中間選挙と大統領選の関連


上の表でわかるように、「政権与党(大統領の政党)」の下院議席が「フタ桁以上の減少」になると、2年後に大統領の政党が変わる、つまり政権交代が起きる可能性が非常に高くなっているのです。

もちろん、例外もあります。

1970年のケースは、このときがベトナム戦争のただなかであったことを考慮すると理解しやすくなります。「戦時は大統領のもとに終結」。戦争中、再選されなかった大統領はいません。

1982年は、レーガン大統領の圧倒的な国民的人気が、自身とその後継者の当選に大きな力を与えたといえます。1994年のケースも、クリントン自身の当時の人気の高さから説明がつきます。

というわけで、1960年代以降、「中間選挙で政権与党(大統領の政党)の下院議席がフタ桁以上減少し、2年後政権交代がおきた」確率は約57%。2回に1回以上の割合で、政権交代が起きているのです。

下院選のちょっとした変化も大きな予兆につながる可能性

基本的に、下院議員は現職議員が圧倒的有利な傾向にあります。

いろいろな分析が試みられているのですが、アメリカの政治学者バーナムの「下院議員の地位の相対的低下とそれにともなう選挙民の下院議員選挙に対する関心の低下」(『アメリカ現代政治』阿部斉より)が、現職下院議員の選挙での圧倒的有利を招いているという説が有力です。

ですから、それにもかかわらず下院の勢力がわずかとはいえフタ桁変動するなら、それは軽視できない有権者の態度が現れていると考えていいでしょう。

ちなみに、上院の勢力はあまり変化しないので、次期大統領選の参考にはなりにくいところがあります。3分の1ずつしか改選しないという制度的な影響が大きいと思われます。

★次ページでは、今年の中間選挙についての情勢、そしてどうなる2008年大統領選挙、というあたりをお話したいと思います。
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