2ページ目 【小渕倒れ、不人気森政権と「加藤の乱」】
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【キングメーカー・野中の敗北と小泉の総裁選勝利】
本格化した「ポスト森」
「加藤の乱」の鎮圧は、必ずしも森首相続投を意味するものではありませんでした。自公連立に反対する非主流派を一掃したのみであって、自民党幹部たちは「ポスト森」の時期をうかがうようになります。そして公明党も、いよいよ橋本派に対して非公式に森交代を打診してきていました。翌年の参院選を控え、森では厳しいと考えていたからです。神崎武法公明党代表があげた「ポスト森」には、野中の名前があったといいます。
もっとも公明党は、小泉の名前もあげていたようですが。
そんななか2001年に入り、「えひめ丸沈没事件」(高校の実習船がアメリカ海軍の潜水艦に衝突され、多数の死者が出た事件)が起きると、その一方を聞きながらゴルフプレーに興じていた森の行動に多くの批判が噴出。
神崎に続いて野中、青木も批判するようになり、森退陣は決定的に。森は森不在の森派会長・小泉に総裁選の前倒しを表明。「ポスト森」は、ここに本格化することになります。
キングメーカー・野中の一手
2月末、青木・野中・古賀・神崎が会談。3月の党大会で総裁選の前倒し……事実上の森首相退陣表明……を決定。ただし、党大会までは森は辞意を表明しない。いや、党大会でも辞意そのものは表明しない、ということになりました。問題は、ポスト森です。
参院議員の青木は、参院選を考えれば小泉が適当と考えていました。彼の国民的人気を考えてのことでした。しかし、野中は小泉ではダメだと考えていました。野中=古賀体制のもとで総裁をやるべき人物でないと、推せない。おそらく「変人」小泉は野中=古賀体制を無視してかかるだろう。そんな読みがありました。
そして、一時期には野中自身が後継候補として取りざたされるようになります。
しかし、野中は「200%なし」と発言。実際、自身の出馬は難しいと考えていました。……もし、小泉が出馬した場合、自分が出馬すると「経世会VS反経世会」の直接対決になりかねない。キングメーカーの失脚を狙って一致団結されかねない。党の結束が乱れてしまう。
結局、野中が推したのは元首相、橋本龍太郎でした。橋本VS小泉なら、「反野中感情」をやわらげることができると考えたのです。
小泉、立候補を決意
一方、小泉は迷っていました。森は、小泉の出馬に消極的でした。橋本派との全面対決になって、非主流派入りすることを恐れていたからです。もし橋本派が推すなら……これが森の小泉出馬を認める条件でした。
しかし、「反経世会」でYKKを立ち上げた小泉としては、橋本派にのりかかることはおもしろくない。しかし、今回総裁選に出ると3回目、敗戦すれば次はない。そうしたことから、小泉はポスト森と目されながら、沈黙を守ってきました。
そんななか、自民党の各都道府県連は予備選を行う以降を示すようになりました。最初は東京都。各都道府県連に割り当てられた地方票を、党員による予備選で決定しようというものでした。
自民党バッシングに対する地方党員の危機感。この方式を採用する県連はまたたくまに全国に広まっていきました。
これなら勝てる……こう考えたのが、田中真紀子です。父・田中角栄の派閥を乗っ取った「経世会」に大きな反感を持つ田中が、「自分と小泉先生の人気なら党員票はすべてとれる」と、小泉に強く働きかけました。
こうして、小泉は立候補する決意をしました。
野中の敗北、小泉ショック
野中にとって最大の誤算は亀井静香の立候補でした。橋本立候補は、橋本派内ですら若手の異論が飛び出す状態。野中も青木も、若手をまとめあげることができませんでした。この状態を見て、「橋本の勝ちはわからない」とふんだ江藤・亀井派はキャスティングボードを握るべく、亀井の立候補に踏み切ったのです。
こうして旧来の「派閥の論理」なら当然持ち得たはずの、橋本の優位性は失われました。
立候補以降の小泉人気は凄まじいものがありました。街頭演説はどこにいっても人だかり。これをみて橋本陣営は、重点県を絞って党員予備選に備えようとしました。党員予備選に惨敗しなければ、議員本選で勝つことができると考えたのです。
しかし、地方選の開票結果は小泉123票、橋本15票、亀井3票、麻生太郎0票。圧倒的な小泉勝利でした。小泉の得票率は58%。
「乗るべき勝ち馬」は、橋本から小泉になりました。亀井は小泉との連携を視野に本選を辞退。結果、小泉298票、橋本155票、麻生31票。劇的な小泉勝利でした。自民党は、大きく動いていきます。
※「自民党の歴史(11)橋本構造改革の挫折」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
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