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【ルカシェンコ独裁を批判する欧米、守りたいロシア】
KGBも再生させるルカシェンコの「独裁」
ベラルーシの行政区分。地方の知事はルカシェンコ大統領が任命するが、彼はそれを「超民主主義」と自負する |
ルカシェンコが2001年に再選された大統領選では、反対派の運動は警察に抑え込まれ、野党的新聞社は銀行口座を凍結されていたといいます。
またその後、政府は独立労働組合の運営に露骨に介入したり、メディアを政府管理下に置くなど非民主的な政治手法を行い、さらに欧米流民主主義を痛烈に批判したりもしたため、「ヨーロッパ最後の独裁者」と名付けられるようになったのです。
そして2003年に大統領3選禁止規定を撤廃して3選に向けて動いたルカシェンコ。今回2006年の大統領選でも、ルカシェンコのなりふりかまわない選挙「工作」は止まりません。当局はデモを「テロ」とみなし死刑適用をほのめかし、独立系メディアの活動を停止、北欧からの選挙監視団の入国も拒否しました。
そして、ベラルーシKGB(!)がくまなく選挙を監視、ルカシェンコの「圧倒的3選」が決定しました。こんなやりかたに欧米は激しく反発、EUが制裁発動を検討、アメリカも「専政国家」としてベラルーシを名指しして非難しています。
ソ連の復活を願っていたルカシェンコ
さて、ルカシェンコは単にロシアとの提携を国家間の提携強化だけで終わらせるつもりはなかったと考えられています。「ルカシェンコはソ連を復活させようとしていた」というのです。そのため、ルカシェンコはエリツィンがロシア大統領だった1999年、ロシアとベラルーシの連合体を作り、そこに大統領をおくことを提案しています。
当時のエリツィンの健康状態は良くありませんでした。ルカシェンコは、「新ソ連の大統領」になるつもりで、これを提案したのでしょうか。
結局、大統領職設置は見送られたものの、同年、ロシア・ベラルーシの間に「連合国家創設条約」が調印されました。
ひとり「ソ連イズム」を叫ぶルカシェンコ
しかし、2000年にプーチンが登場してからは、ルカシェンコが「連合国家の頂点にたつ」ことは非常に困難になりました。プーチンの若さと人気からいって、もし頂点にたつのであればプーチンに違いありません。プーチン政権もまた、ベラルーシがうっとうしくなりました。西側に接近して経済協力をしたいロシアとしては、ソ連の面影を追い求め西側先進国を刺激する発言を繰り返すルカシェンコはあまり相手にしたくない存在になったのです。
このころからルカシェンコはベラルーシでひとり「ソ連イズム」を叫ぶことになります。ベラルーシの教科書ではソ連の解体を悲劇的に伝えるようになり、「ソ連秘密警察が市民を虐殺して埋めた」とされるクロパティという地は道路の底に埋められてしまいました。
独立の一時期復興しかけたベラルーシ語教育は見直され、再びロシア語中心の教育に戻っています。活字媒体も多くがロシア語のもので、一番よく売れているのは政府が発行している新聞『ソビエト白ロシア』という名前もこれまた……的なものになっています。
この記事の冒頭でお話した、ルカシェンコが「ベラルーシ・ナショナリズムの抑圧」理由は、同様にナショナリズムを危険視し、抑圧していたソ連の面影を彼が追いかけているのだ、と考えることができるでしょう。
もちろん、現在のベラルーシ・ナショナリズムはウクライナ同様、「脱ロシア=ヨーロッパ接近:民主化の要求」という部分が強くあると思われますので、ナショナリズムの台頭が自身の政権崩壊をもたらすことを恐れている面もあると思われます。
しかしいずれにしても、ルカシェンコ自身が持つ「なきソ連への思い入れ」は、強いものがあるようです。
ルカシェンコとプーチン、最接近と「旧ソ連諸国民主化」
もともとCISに参加せず脱ロシアを目指していたバルト3国に加え、21世紀に入って多くの国が民主化、「脱ロシア」を図っているといわれる |
その原因は、ここ数年の旧ソ連諸国での「民主化」運動にあります。
2003年、グルジアでは議会選での不正を機に「ビロード革命」または「バラ革命」といわれる無血革命が起こり、シュワルナゼ大統領が辞任。アメリカ・ブッシュ政権は直ちに歩み寄り、最大限の支援を約束します。
そして2004年、旧ソ連2番目の大国ウクライナで、大統領選での不正を機に親ロシア政権が崩壊、親欧米政権が誕生しました。いわゆる「オレンジ革命」です。
2005年には中央アジアのキルギスでも、議会選での不正を機に独立以来政権を握っていたアカエフ大統領が打倒されました(チューリップ革命)。
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ロシア・プーチン政権の抱く脅威とベラルーシ
ロシア・プーチン政権にとって、これ以上「民主化=ロシア離れ」は安全保障的にも避けたいところなのが本音 |
旧ソ連諸国の民主化は、ウクライナがそうであるように、「ロシア離れ」を進めさせます。それは、ロシアにとって経済的な打撃だけでなく、安全保障・軍事的にも大きな脅威が迫ってくることを意味します。
つまり、アメリカや西ヨーロッパと、ロシアとの安全保障の境界線が、どんどんロシアに迫ってくるからです。ロシアの周りにある旧ソ連諸国は欧米との緩衝地域、クッションのようなものであり、それがなくなってしまうのはロシアにとっては脅威、というわけです。
このようなロシアの思惑の中、ルカシェンコの独裁はいつまで続くのでしょうか。
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※「欧州最後の独裁者がいる国ベラルーシって?」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
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