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防衛庁よりも前にできた? 防衛施設庁って(2ページ目)

防衛施設庁の幹部・元幹部による官製談合事件が発覚。そもそも防衛施設庁とは?実は防衛庁本体よりも歴史は古いのです。写真:(c)沖縄発!役に立たない写真集

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【防衛施設庁の業務~防衛公共事業の中心官庁】
2ページ目 【防衛施設庁の歴史~防衛庁より12年早く設立?】
3ページ目 【なくならないのか「官製談合」この際考えてみましょう】

【防衛施設庁の歴史~防衛庁より12年早く設立?】

防衛庁より10年以上前にできた防衛施設長の前身

防衛施設庁の歴史
防衛施設庁の前身は、自衛隊・防衛庁創設よりも12年前にさかのぼる。占領軍の調達部署が前身の特別調達庁だった。
防衛公共事業を一気に請け負う部署、防衛施設庁。それだけでも、今の日本では癒着がはびこる舞台のひとつになることは容易に想像がつくところではありますが……。

防衛施設庁は、その前身は、実は防衛庁よりも前にできたものなのです。最初は、防衛庁とはまったく別物だったのですね。

そのため、防衛施設庁は今でも防衛庁から独立性を高く保っており、なかなか防衛庁の目が行き届かない……という指摘もあります。

なぜ、防衛施設庁は防衛庁より前にできたのか……それは、自衛隊よりも先にアメリカ軍が日本にいた、からに他なりません。

防衛施設庁の始まり

ということで、話を終戦直後に移します。

なにせ、日本には戦争末期まで終戦後の準備をしている役所なんてありませんし、アメリカ軍もやってきて適当にあれを接収、これを……という感じでやっていて、その矛先もやれ民間だったり政府だったり地方公共団体だったり、という形でかなり混乱していたのです。

これをなんとかするため、アメリカ軍の「調達制度」が整えられ、1947年、特別調達庁が発足し、アメリカ軍からの調達業務の一元化を図ることになりました。

ただ、これは「庁」とは名乗っていたものの、「公法人」、今でいう「特殊法人」的な扱いだったため、ちゃんと官庁にすべき、という声もあり、また地方公共団体に任せた地方の調達の一元化の必要もあったので、翌年には政府の部局となり、職員も1万人以上にまで増員されました。

その後、1949年、国家行政組織法の施行にともない、あやふやな地位を解消すべく、総理府の外局、アメリカ軍の調達請負機関として再編されました。

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総理府から防衛庁への「引っ越し」

1952年、特別調達庁は、サンフランシスコ平和条約締結にともなう日本の独立に合わせて、調達庁と名称変更されました。

そして、引き続き在日アメリカ軍の調達を請け負うこと、さらに返還された建造物や物の保管、返還などにあたることになりました。

さて、1954年、自衛隊と防衛庁が設置されたわけですが、自衛隊の施設は防衛庁の建設本部が行うことになり、防衛の調達体制が2元化されてしまいました。

しかし、1960年の日米安保条約改正によって、「日米共同防衛」が具体化されることになりましたが、そうなると自衛隊と在日アメリカ軍の連携や、協力関係が必要になります。

しかし、それではこれらの調達が二つに分かれているのはまずい。と、そういうことから、防衛庁の建設本部と調達庁を合併し、防衛施設庁として再編されることになったのです(1962年)。

「公共事業批判」のなかに隠れていた「防衛公共事業」

洗機場
嘉手納基地にある戦闘機の「洗機場」。これだけみても、米軍施設や自衛隊基地などの公共工事は一大プロジェクトになることがわかる。写真:(c)沖縄発!役に立たない写真集
こうして、自衛隊と在日米軍の防衛施設に関する調達事業を一手に請け負うことになった防衛施設庁。

旧建設省や旧道路公団などと同様、巨額なプロジェクトを実施し、さらにそれによって大手ゼネコンなど業者と密接に結びつくことになるだけに、「癒着の実はおいしかった」のでしょう。

しかし、よりによって前職と現職の防衛施設庁のナンバー3である技術審議官が逮捕されるというのは重大です。組織全体に癒着の構造が深く蔓延していることを示しています。

しかし、それを監督する人たちはおらず、検察の捜査でようやく明らかになるありさまには、少し悲しいものがあります。

なぜ官製談合はなくならないのか?

さて、相変わらず続く官製談合(官僚が大きく絡む談合のこと)。談合によって、国民の税金が不当に多く使われることは、いうまでもありません。

透明性の高い調達を行うため、会計法・予算決算および会計令という法令が定められていて、基本的に調達は「競争入札」でよらなければならなくなっています。

つまり、これこれこういう工事などについて、請け負ってくれる企業を広く募集し、入札を行ってその価格で基本的に請け負い企業を決定するというものです。

これと反対のものが「随意契約」、よく「随契」といわれるもので、入札を行わないで調達などの契約をするものです。しかし、これは緊急性が高い場合や、独創性が高い場合(たとえば、このプロジェクトは世界でもこの企業しかできない、といった場合)にしか、許されません。

そのため、随意契約というものも基本的にはそう数があるわけではなく、いわんや昨今、官民癒着などといわれている現状、「癒着しているように」見えてしまう随意契約は避けられる傾向にあります。

問題は、「指名競争入札」という方法にある、といわれています。法令では認められているのですが、どのあたりに問題があるのか、次のページで見ていくことにしましょう。

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