(2005.08.08)

いよいよ解散、総選挙となりました。いったいどうなる日本の政治……と、その前に衆議院総選挙の制度、しくみとその理念について理解しておきましょう。また、基本的な選挙運動の規制についての知識もお話します。

1ページ目 【なぜ「小選挙区比例代表並立制」なのか】
2ページ目 【小選挙区の結果が比例代表に影響するしくみ】
3ページ目 【選挙運動の決まり、違反行為を知っておこう】

【なぜ「小選挙区比例代表並立制」なのか】

小選挙区比例代表「並立制」とは

参議院と同じく、衆議院の総選挙でも小選挙区制と比例代表制の2つの制度が同時に採用されています。

ちなみに、小選挙区制で当選するのは300名。比例代表制で当選するのは180名となっています。

しかし、参議院通常選挙と違い、衆議院総選挙では「小選挙区制と比例代表制が《シンクロしている》」という点に注意したいところです。これが「並立制」という言葉がつくゆえんです。

つまり、1つは「小選挙区制と比例代表制、どちらにも立候補できる(重複立候補)であり、もう1つは、「小選挙区の結果が比例代表での当選者決定にも影響を与える(惜敗率ルール)」というものです。

そのため、比例代表での当選者が最後まで決まるのはかなり遅くなります。接戦になればなるほど。あきらめて寝て、いきなり当選だとたたき起こされた、という話も聞いたことがあります。

では、その内容を詳しく説明していきましょう。……と、その前に、まずは小選挙区とは、比例代表とはいったい何か? という基本的なお話からしていくことにしますね。

そもそも「小選挙区」とは何か?

小選挙区制は「多数代表制」。1票でも多数の支持を得られた人が当選するしくみです。要は、ナンバーワン、1人だけが当選するしくみです。

アメリカ両院、イギリスやカナダの下院は純粋にこの小選挙区制です。

しかし、アメリカのような二大政党制ならいざしらず、日本のように小政党もある場合、たくさんの候補がしのぎを削り、「40%弱の得票率で当選」ということもあるのですね。それはいかがなものか、という議論もあります。

ちなみに、下院で小選挙区を採用しているフランスは過半数の得票率を獲得した候補がいない場合、1週間後、12.5%の得票をしたもののみで決選投票をするようにしています(2回投票制)。

なぜ日本は衆議院議員の大部分を「小選挙区」で決めるのか?

小選挙区のメリット、いろいろいわれています。選挙区が小さいから選挙資金がかからない、有権者と候補者の密接度が高い……など。

しかし、もっとも大きなメリットは、「ナンバー1だけが当選→決着がつきやすい→政権交代がスムーズ」というところにあります。

1人しか当選しないわけですから、そのとき、ちょっとでも国民の支持を得られている政党が議席を伸ばし、単独で過半数の議席を持つことが可能になる。こうして、そのときの「より多数」の意見を反映して、政権がすみやかに交代する。これが、小選挙区のメリットといわれています。

事実、1994年で小選挙区制が導入されて以来、与野党の二極化が進み、今では自民党と民主党で全体議席の85%以上という、イギリスなみの二大政党制が進み、政権交代の下地は整いつつあります。

「小選挙区」のデメリットは?

これもいろいろいわれています。当然、小政党は不利ですし、選挙区が小さいので(道路挟んで区が違うとか)、政府が自分たちの都合のいいように「選挙区操作」をすることができやすい(これを「ゲリマンダリング」といいます)、などなど。

しかし、もっとも大きなデメリットは、やはり「死票」が多くなる、ということでしょう。

死票とは落選者に投じられた票です。当然、これも国民の意思です。しかし、1人しか当選しないとなると、当然のように、死票も多くなっていきます。

特に、先に言ったように、たとえば得票率37%で当選、となると、のこり63%の「国民の意思」が、無駄になるわけです。

多数代表制に少数代表制を盛り込む=「並立制」

国によっては、そんなことがあっても、ちょっとでも多数を獲得した政党に国を任せるのが安定していいのだ、ということが了解されているところもあります(こういうことを、「政治文化」というわけですね)。

しかし、日本の国民は、それを納得はしきれていない。少数派にも国政参加の権利を。ということで、衆議院総選挙においては、残り180議席を、少数派の意見も反映する=少数代表制の一種である、比例代表制(政党の得票率=政党の議席数)で決めることにしたのです。

比例代表制は、厳密に言うと少数代表制とはいえません。政党を組めない勢力は参加できないわけですから。しかし、今の民主政治はイコール議会制なので、「政党も組めないような人たちに参加してもらっても困る」ということは、いちおう正当といえるわけです。

こうして、厳密ではないけれども、少数派でもある一定数があれば議席を持つことができる比例代表制が、世界で見られるようになってきたのです。

たとえばオランダ、スウェーデンなどでは選挙制度は比例代表制のみです(もっとも、スウェーデンの場合、349議席のうち39議席を、後で複雑な仕組みで議席を確定する「調整議席」にしています)。

ただ、比例代表制の場合、政党が乱立し(小党分立)、政情が不安定になりやすいと、しばしば指摘されています。あくまで、可能性の話ですが。

さて、日本、衆議院総選挙の場合は、どのような仕組みで比例代表制が運営されているのでしょう。次ページで見ていきます。

◎「多数代表」のデメリットを補う比例代表制