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PKF(平和維持軍)とは?(2ページ目)

スーダンPKOにともなう日本初の「PKF」の派遣はどうやら見送りになりそうです。しかしこの際、PKOとPKFの違い、その歴史、そしてPKFをめぐる日本政府・外務省の思惑を知っておきましょう。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【国連憲章では想定外だった、PKO・PKFの活動】
2ページ目 【冷戦後のPKOの迷走、そして古典的PKOへの回帰と進歩】
3ページ目 【安保理常任理事国入りには軍事貢献が不可欠と考える外務省】

【冷戦後のPKOの迷走、そして古典的PKOへの回帰と進歩】

ガリ事務総長の「平和創造・執行」構想

湾岸戦争はともかく、旧ユーゴでの民族紛争、ソマリアでの部族紛争は、基本的に内戦であり、国家だけが必ずしも当事者ではないという問題があります。しかし、マスメディアの発達によって、人々はそこでの悲惨な現状を目の当たりにして、なんとかしたい、と思うようになるわけです。

そこで、PKOをより強力なものにし、平和を作っていこう、という考え方が生まれます。これが、「平和創造」あるいは「平和執行」という考え方です。

つまり、ある意味強引にでも、平和を作り出し、人道的見地からみてとても悲惨な民族紛争をなくしていこう、というものです。これは特に、当時のガリ国連事務総長のもと、より具体化されていきました。

「平和執行」の挫折

ところが、この試みは早期に挫折してしまいます。

1992年、内戦の停戦が実現しないまま、「平和創造」の理念のもと避難民の救援活動をスタートさせたソマリア内戦のためのPKO、「第1次国連ソマリア活動(UNOSOM:I)は、暗礁に乗り上げます。これをうけて、ブッシュ(父)政権下のアメリカは、大規模な軍事展開をUNOSOMのために行うことを表明します。

その結果、「総合任務部隊(UNITAF)」とよばれる米軍中心の多国籍軍が編成され、「希望回復作戦」が実行、この結果、避難民への救援物資の輸送確保が進んでいきました。

これを受けて、国連安保理で内戦各派の武装解除を「執行」するための「第2次国連ソマリア活動(UNOSOM:II)」の展開が決定、米軍を中心とするさらにスケールアップされた多国籍軍がソマリアに赴き、各派に武装解除を「指令」します。

しかし、これを拒んだアイディ-ド派と多国籍軍は対立し、米軍はアイディ-ド派の武力制圧を決めます。しかしながら、そのため戦闘が起こり、多数のソマリア人が死亡し、かつ1993年10月には米軍が攻撃を受け、多くの死傷者を出します。

これがアメリカ国民の世論に火をつけ、クリントン大統領は撤退を決定、他の参加国も続々と撤退、結局UNOSOM:IIは大きな成果を上げられないまま、活動を終了、ソマリアは今も無政府状態が続いています(※ソマリアの現状については拙稿「大津波復興をさまたげる3つの内戦」をご参照下さい)。

これ以降、PKOは再びもとの古典的な原則に基本的には回帰することになり、「平和創造と執行」の概念は国連から姿を消すことになります。

もっとも、このような「人道的介入」、つまり人道的見地からの武力行使は、これ以降国連ではなく、アメリカを中心としたNATOで行われていきます。1995年のボスニアのセルビア人勢力への空爆、1999年のコソボ問題に端を発したセルビア空爆などがそうです。これからも行われていくことになるでしょう。

古典的PKOに回帰しつつも、進化するPKO

先ほどもいったように、特に今のアナン事務総長になってから、基本的にPKOは古典的な中立・専守防衛活動に帰っていきました。

しかし、100%そうなったわけではありません。PKOの新たな役割として、「暫定統治」「選挙監視」「難民帰還」などが加わっていきました。

その先がけになったのが1992~93年に展開された「国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)」でした。内戦後、まだ各派勢力が残る中、カンボジアの暫定統治を選挙が実施するまで行うというもので、日本自衛隊が初めて参加したPKOになりました。

各派、特にポル=ポト派の武装解除が進まず、日本人を含め多くの犠牲者が出ましたが、中立・専守防衛に徹したこの活動は、基本的に成功し、カンボジアに平和をもたらすことが出来ました。

そのことは、それから10年ちょっとたったカンボジアで、日本人たちが道路を鋪装していくという平和なロケを行った日本テレビ制作の『進ぬ! 電波少年』でみてとることができました。

1999年には、インドネシアからの独立を主張していた東ティモールで暫定統治を行いました(「国連東ティモール暫定統治機構、UNTEAT」)。これも成功に終わり、東ティモールは2002年に正式に独立しました。

さて、次のページでは、日本とPKOの関わりについて説明していきたいと思います。

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