2ページ目 【自衛隊を貫く重要原則、文民統制~シビリアン-コントロール】
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【日本防衛の重要原則、その基盤はもろく弱い】
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日本防衛に関する諸原則
自衛隊発足以降の自衛隊の急速な装備の拡大、防衛費の増大はさまざまな波紋、批判を生みました。特に、中国など周辺諸国からは、日本の「再軍備化」に大きな懸念が生まれはじめました。
その懸念を払拭(ふっしょく)するため、日本政府はいろいろな原則をうちたてています。おおまかにいうと、次の通りです。
・専守防衛の原則 攻撃を受けてはじめて、それも必要最小限度の自衛行為にとどめるという原則で、自衛隊法76条、89条がその根拠といわれ、自衛隊の行動の大原則として定着しています。
・防衛費GNP1%枠の設定 防衛の増大を防ぐため、1976年、閣議決定によって決定。1987年にいったんわずかながら突破してしまいますが、その後は1%を超えることなく、だいたい1%を目安に防衛費は決定されています。
・集団的自衛権の禁止 集団的自衛権についてはこちらの記事をご覧ください。集団的自衛権は有しているが、その行使はできない(憲法上必要最小限の自衛権行使しか認められていないから)というのが、1981年からの政府の公式見解です。
その他、自衛隊とは直接関係がありませんが、武器輸出の事実上の禁止、非核三原則なども、周辺諸国に配慮し、平和主義を守ろうとする措置と言えます。
平和のための大事な原則も根拠が弱い
しかしながら、この原則もゆらぎつつあるのが現状です。
専守防衛の原則については、自衛隊が海外にPKOとして、さらにはイラク復興のために派遣されるに及んで、はたして専守防衛で自衛隊員が守れるのか、という大きな問題に直面しています。
そもそも、自衛隊の海外派遣じたいが専守防衛の理念に外れているのではないか、という議論もあります。
また、日本はアフガンでのアメリカの軍事行動の後方支援などを行っていますが、これは集団的自衛権にあたらないのでしょうか。「直接攻撃」はしていないから集団的自衛権ではない、といいますが、ほんとうにそう言い切れるものでしょうか。
そして、問題なのは、これらの重要な原則が、国会会期中であれば改正可能な法律であったり、もっと変更可能な閣議決定、さらには単なる政府統一見解などで、決まっているという事実です。
このような大事な原則は、日本国憲法にしっかり明記されるべきではないか。もちろん、今の憲法には自衛隊の存在すら規定されていません。ここですでに大きな問題です。
自衛隊の存在を憲法でしっかり明記した上で、民主的な「軍隊」にとって必要な諸原則、つまり文民統制であるとか専守防衛であるとか集団的自衛権の禁止であるとか、そのようなことをしっかり盛り込み、自衛隊が平和的な組織であり、これからもそうあり続けることを規定する、そんな議論をする時期に来ているのではないでしょうか。
日本の平和問題については、もう1つ、日米安全保障条約体制という大きな問題があるわけですが、今回はこれでうち止め、次回にまわしておきましょう。
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(写真提供:O&C Gallery)