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日本の二院制は必然かムダか?(2ページ目)

憲法改正論議の中で浮上してきた、「一院制」への移行論議。一院制や二院制とかよく分からない人も、わかるようにやさしく考えてみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【二院制の基礎知識(1)】
2ページ目 【二院制の基礎知識(2)】
3ページ目 【議会のリストラか慎重さか】

【二院制の基礎知識(2)】
日本の二院制はムダが多いのか、それとも慎重を機しているのか


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日本は、連邦制をとっていないのに、衆議院も参議院もどちらも国民の代表から構成されている二院制をとっていますね。このような国としてはイタリアなどがあります。ただ、イタリアなどでは上院の一部の議員は選挙なしで任命されたりしていて、純粋に二院ともすべて選挙で選ばれた議員だけ、というのは日本くらいのようです。

このような二院制のメリットはなんでしょう。よくいわれるのが、2回同じ審議をすることで慎重な審議ができる、ということです。

しかし、両議院とも選挙で選ばれているということで、日本でも衆議院と参議院、あまり勢力比がかわらないのが実情です。慎重に、といっても実際には衆議院できまったことがそのまま参議院でも通ってしまう、これって無駄なんじゃないの、というのが指摘されています。

一方の暴走を一方が止めることができる、というメリットもあるといわれます。一方の院が極端な法律を立続けに制定しようとしても、もう一つの院でそれをとめることができる、ということです。

たとえば衆議院総選挙で与党が負けて新たな党が与党になって政権交代になった、そうしたらたてつづけに今までとは全く正反対の政策を立案して国を混乱させてしまう。そうならないように、参議院の意味があるのだ、というようなことです。

しかし、これも時が立てば衆議院と参議院の政党勢力が似通ってしまい、やがて参議院は衆議院の暴走をただ認めるだけの存在にならないとは限りません。衆議院と参議院、同時選挙で政権交代になったらどうでしょう。衆議院と参議院で勝つ政党が異なるとは考えられませんから、その瞬間から、参議院は衆議院の「暴走」の追認機関になっちゃいますよね。

このように、二院制のメリットといっても、それを発揮するのはなかなかむずかしいということがわかりますね。それなら議員たくさんかかえてるのなんか無駄だから、一院制にしちゃえ、という議論が出てくる意味、よくわかります。

実は、日本国憲法の制定過程の中でも、このことは論議されました。当初、日本国憲法に大きな影響を与えた「マッカーサー草案」では、国会は一院制とされていました。

しかし、上のような二院制のメリットをとく人たちが日本人の中から多く現れ、日本国憲法では衆参両院からなる二院制が採用されたのですね。

さて、一院制の国となると、どんな国があるのでしょうか。次のページでお話しましょう。

 
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