社会ニュース/よくわかる政治

直接民主制は「民主主義」?

民主主義をトレーニングするシリーズ第2弾。直接民主主義こそ本来の民主主義だ、という主張がありますが、どうなんでしょうか。先人たちの言葉を借りながら、解説していきます。

執筆者:辻 雅之


(2002.10.22)

1ページ目 【議会制民主主義は「ドレイ」の政治か?】
2ページ目 【国民投票の意義と問題点】
3ページ目 【そもそも・・・「絶対に多数の意見が正しい」のか?】

「民主主義を甘やかすな!」第一弾はこちら。

【議会制民主主義は「ドレイ」の政治か?】
選挙が終われば有権者無視の政治家たちって・・・


選挙運動中、やたらぺこぺこする候補者。政策よりも何よりも、「わたしをオトコにしてやってください」なんて恥ずかしい(!)ことをいうおじさんたち。

「あんなの、選挙中だけだよね~」なんてみんなよくいいます。国会議員、当選すると大先生。料亭で密室、記者にどう喝、みんながみんなとはいいませんが、そんなイメージありますよね。

このことを18世紀のむかしにすでに指摘していた人がいました。名著『社会契約論』を書いた、フランスの啓蒙思想家ルソーです。

かれは、『社会契約論』のなかで、当時イギリスで発展しつつあった議会政治について、こんなことをいっています。

 イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。彼らが自由なのは、議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民はドレイとなり、無に帰してしまう。
(岩波新書『社会契約論』桑原武夫・前川貞次郎訳より引用)

まだ絶対王制の時代のフランスで、イギリス議会制の「欺瞞(ぎまん)」をといたルソー。ただものじゃあありませんね。それはともかく、かれはこのようなことから、こう考えました。

主権は人民のものであり、ゆずりわたすことができない」。主権を持つ人民が従うもの、それは人々の共通の意志である「一般意志」。この一般意志を表現できる政治形態、それはみんなで集まっていろんなことをきめる政治、つまり直接民主制だ、とルソーは考えました

それにくらべると、議会制は選挙のあとになると、けっきょく政治家の意志による政治になってしまい、人民の意志は反映されない。民主政治とはいえないよ、というわけです。




しかし、現代のような巨大国家で、みんなの意志を「みんなで集まって」決めるわけにはいきません。それを実現するのが、「国民投票」や「住民投票」といわれています。次ページでは、この国民投票、住民投票の現状について解説していきます。
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます