既成政党への不満をうまくとりこんだルペン党首の一人勝ち
フランスの大統領選挙は2回投票制です。1回目の投票で過半数の得票を誰も集めなかった場合(いままで集めた人はゼロ)、上位2人で決選投票を行うというものです。
この制度により、第1回投票=保守勢力/革新勢力の候補者決定のための予選、第2回投票=保守勢力と革新勢力の一騎討ち、という図式が定着します。第1回投票では各政党が候補者をだして激しく争います。しかし第2回投票ではそれぞれの勢力が政党の垣根を超えて結束しなければなりません。
このことにより、フランス政党政治ははじょじょに純粋な多党制から2大政党ブロック制へと移り、政治は安定してきました。
しかし、政治が安定し政治が2大政党化していく中で、かえって既成の政党が国民からの支持を減らし、極右政党の進出を許すようになったのは皮肉な話です。
▼フランス大統領選の結果
移民排斥をとなえて1980年代後半に現われたFN(国民戦線)は、ルペン党首をたてて大統領選に3回挑戦。回を重ねるごとに支持を伸ばし、とうとう今回の大統領選では決選投票にまで歩を伸ばすことに成功してしまいました。
いっぽう社会党は大統領選での得票率が回を追うごとに低下。今回はとうとう3位16%の得票にとどまってしまいます。
社会党はもともと反体制側の代表的な政党でした。しかし今では、今回の大統領選でも現職の首相を候補にたてる「体制側」の政党。政権党として経験を積む一方で、アンチテーゼとしての魅力が薄れていっているのかもしれません。
保守政党側のシラク大統領も、第1回目投票では前回より得票率を減らしました。決選投票ではルペンに圧勝したものの、国民の「既成政党離れ」はもはや隠しようがありません。
今後、既成政党がわがいかに国民の支持を取り戻していけるか。注目していきたいところです。
最後のページでは、フランスだけにとどまらない右翼政党の台頭と、その背景について解説していきましょう。