(2001年11月5日)
1ページ目 【イスラム教 基礎知識】
【イスラム教とキリスト教の関係】
2ページ目 【イスラム教と女性】
3ページ目 【イスラムは好戦的か──聖戦(ジハード)とは】
4ページ目 【ではなぜイスラム教社会は民主的でないのか】
【イスラム教 基礎知識】
イスラム教は7世紀初めころ(日本だと聖徳太子の時代)、ムハンマド(マホメット)によってアラビア半島で始められた宗教です。
唯一の神アラーを信仰。アラーの言葉(啓示)をまとめたものが聖典『コーラン(クルアーン)』です。
イスラム教は徹底して信者の平等を説いたことで急速に発展していきました。7~8世紀に地中海沿岸に今のスペインをも含むイスラム帝国が築かれたことは世界史の勉強をした人ならご存じのことでしょう。
その後イスラム教はインドの一部や東南アジアなどにも広がって行き、現在では10億人にのぼるイスラム教徒が存在するといわれています(キリスト教徒は約18億人、仏教徒は3億人程度)。西ヨーロッパにも移民を中心として1000万人くらいのイスラム教徒がいますし、アメリカでもその数を増やしているようです。
こんなに普及しているイスラム教ですが、日本やヨーロッパ、アメリカの人々にはいまいちしっかりした知識がなく、大きく誤解されている部分もあるようです。しかしとんでもない宗教がこんなに広まるわけはないわけですよね。
今回は、特に「イスラム教は民主主義とは相容れない」といわれることについて、ほんとうにそうなのか、解説して行きたいと思います。
【イスラム教とキリスト教の関係】
今度の「戦争」は「民主主義のキリスト教世界VS宗教に生きるイスラム教世界の激突」というようにいわれたりしています。
イスラム教とキリスト教って、まったく相いれない水と油のような思想なのでしょうか。
そう思ってコーランを読むと、けっこうキリスト教やその母体となったユダヤ教の内容はしっかり肯定されているのです。コーランによれば、キリスト教やユダヤ教の教典(新約聖書や旧約聖書の一部分)も、コーランと同様、神アラーが人々に授けたものとされているのです。
ただ、ユダヤ教徒・イスラム教徒たちはともにその神の授けたものを勝手に解釈したり付け加えたりしてしまい、今では正確ではなくなってしまった。それをただすため、最後に神がその言葉を授ける者(預言者)として選んだのがムハンマド(マホメット)というわけなのです。
そんなことで、ユダヤ教やキリスト教は一部誤りがあるものの、基本的にはイスラム教と同じ根っこの宗教とされているわけで、両教徒たちは「啓典の民」とよばれ(啓典;神の言葉を伝える教典)、イスラム教徒に保護される存在となっています。
中世のキリスト教社会が異端に厳しかった(宗教裁判などを行い異端者を徹底的に迫害)こととは対照的に、同じ時期のイスラム教社会ではキリスト教徒の信仰や生活権が十分に保護されていたことは、高校の世界史の教科書にも書かれています。
次のページでは、「イスラム教と女性」「聖戦」について、説明していきます。