アメリカの副大統領ほどえらいのかえらくないのか、よくわからないポストはありませんといったら大げさでしょうか。
アメリカの副大統領といえば「大統領が死んだり辞めたりしたら次の大統領に自動的に昇格する」ポストとして知られています。
実際、20世紀中にもルーズベルトの死後トルーマン、ケネディ大統領暗殺のあとジョンソン、ニクソン大統領辞任のあとフォードが、それぞれ副大統領から大統領に昇格しています。
ただ、副大統領の一番の仕事は「議会の上院の議長」をつとめること。意外かもしれませんが、アメリカの上院議長は副大統領なのです。議会対策が副大統領の大きな仕事といえます。
もっとも議会対策といっても、そこは多くの「ロビイスト」たちが集うアメリカの政界。副大統領が議長の権限だけで行える議会対策は限定されており、まあやはり「大統領の代打」という意味合いが強いかもしれません。
むしろアメリカ副大統領の一番の見せ場は大統領選挙中、候補者に副大統領候補として指名される瞬間かもしれません。老いた大統領候補は若い人物を、主流派の候補はマイノリティー出身者を、豪快な候補は繊細な有能タイプなんかを選んで、足りないところを補おうとすることが、ここ最近行われているような気がします。
なんか副大統領っていまいちなにやってるかわかんないような説明をしてしまいましたが、もっとも今のチェイニー副大統領はひと味違う「強い副大統領」のようです。詳しくは次ページで解説していきましょう。
【大統領の決断に重要な影響? 補佐官というポスト】
最近のアメリカ政治でかかせないポストが「大統領補佐官」です。文字通り大統領を補佐するポストで、最近は「首席補佐官」「国家安全保障問題担当補佐官」「経済政策担当補佐官」がおかれています。
第2次世界大戦後、超大国となったアメリカの大統領はどんどん権限が増す一方でしたが、大統領を支える長官たちもまた担当の各省の仕事で忙殺されてしまう状態。そんななか、大統領のもとで政策作成や情報収集に専念し、大統領に情報と助言を与えるポストが大統領補佐官です。
特に1970年代はじめ、ニクソン大統領の補佐官として電撃的な中国との和解を演出したキッシンジャーの活躍は有名で、この時以降補佐官の重要性が確立したといえます。
補佐官はニュースなどでは目立たない存在ですかもしれませんが、大統領の政策を支え、その決断に大きな影響を与えるポストであり、それだけに大統領の信任が厚く、かつ有能な人が就任する必要があります。
ブッシュ大統領のアメリカ外交政策を支えるライス国家安全保障担当補佐官はそういった意味ではうってつけの人材といえそうです。詳しくは次ページで。