【自衛隊の「国際協力」そのメリット・デメリット】
自衛隊の「国際協力」のための海外派遣については、憲法をめぐるさまざまな議論があるわけですが、ここでは憲法問題はひとまずおいて、じっさいの国際情勢や日本の防衛に与える影響について考えてみたいと思います。
自衛隊の海外派遣を拡大していくことのいちばんのデメリットは「戦争に巻き込まれる危険が高まる」ということでしょう。
アメリカへの後方支援をこれまで以上に活発かつ緊密に行うことによって、日本がアメリカの味方とされ敵の攻撃対象となることは、十分予想されることです。
また、停戦していない地域で難民救助などの平和活動を行うようになれば、現地の紛争に巻き込まれ、多くの被害を出してしまうこともまた十分に考えられます。
もっとも、「自衛隊を派遣しない」ことで必ず「戦争に巻き込まれない」というわけではないことも、じゅうぶん認識しておく必要があります。
世界の安全保障体制は、国連安全保障理事会の常任理事国(=アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国)が世界の軍事大国で占められている現状からもわかるとおり、まだまだ軍事力が支配している状態です。つまり軍事力のある国の発言力が強く、そうでない国の発言力は弱い、というのが世界の現状ということです。
こんな現状の中、日本が自衛隊を「使わない」ことは、安全保障の分野で「何も発言しない(できない)」も同然となります。
これもまた危険です。日本がいないところでどんどん話が進んだりこじれたりしてしまって、気がついたら戦争に巻き込まれていた、ということもありえるからです。
このようなことがおこらないように日本がある程度発言力を持つためには、自衛隊をなんらかの国際協力に従事させその存在をアピールすることも必要になるといえます。これが自衛隊派遣の「メリット」になるでしょう。
こう考えていくとなかなかむずかしいところですが、もし日本がアフガニスタンのその後の「和平」に関わっていくつもりなら、やはりなにかしらの「国際協力」は必要になるでしょう。
そしてそれがアメリカ軍の後方支援だけでなく、アフガニスタンの難民支援や救出などイスラム諸国の間でも納得、受け入れられるようなことができれば、その後の和平プロセスに積極的に関与できるようになるかもしれません。
いずれにせよ「アメリカがこうだからこうする」という受け身の姿勢でなんとかなるつもりでいると、取り返しのつかないことになるかもしれません。日本が日本としてなにをすべきなのか、新法の成立を急ぐだけでなく、きちんとした議論が行われるべきでしょう。
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