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意外に多いのはリビングなどで転倒するケース! 家の事故 普通の部屋が危ない!(2ページ目)

家庭内ので起こった不慮の事故。最も多いのは転倒ですが、その73%はリビングなどの居室で起こっています。一見安全そうなリビングですが、実は意外なところに危険が潜んでいるのです。その危険とは…。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド



◆住宅のこんなところに危険が潜んでいる!

ふたつの調査結果からわかることは、リビングなどの普通の部屋のちょっとした段差につまずいたり、配線コード、カーペットの端に足を取られて転倒し、(救急車を呼ぶくらい)大ケガをしたり、最悪の場合死亡に至る人が多いということです。住宅には、予想以上に大きな危険がひそんでいるんですね。

では、住宅のどこに危険があるのでしょうか。

たとえば、和室と洋室の段差。わずか2~3センチメートルの段差なのですが、こういった小さな段差が危ないのです。

写真のような和室と洋室の間には敷居があることも多く、こういったわずかな段差につまずくこともあります適切な場所にコンセントがないとこのように床に延長コードを這わせることになり、これまたとても危険

また、コンセントなども数が不足していたり、配置が適切でないと、延長コードを使うことがありますね。そうすると、床にコードが露出して、それに足を引っかけて転倒するということにもなりかねません。

そのほか、フローリングの上に電気カーペットを敷いているお宅もよくみかけますが、カーペットの端にスリッパの先が引っ掛かって転ぶことも考えられます。

さらに、作り付けの家具のように、前面がフラットであればよいのですが、奥行きが不ぞろいな置き家具のある部屋もケガのもと。ちょっとしたことで手足をぶつけたりということはありませんか? アザをつくるくらいですめばいいのですが…。


◆リフォームによるバリアフリー工事はコストも時間もかかる!?

それでは、段差や延長コード、家具など、危険性の高い箇所をどのように解消したらいいのでしょうか。

たとえば、最もよくある和室と洋室の段差を建築時から解消するには、和室部分の床を洋室に合わせるため(和室の床レベルに洋室を合わせるケースもある)、畳の厚みだけ和室部分の床を下げるように束(つか)を短くするなどの方法をとって建築する必要があります。

この場合は、建築前に何ミリの厚さのフローリングを使うのか、建具はどんなものなのかなど、各部材の厚みなどを正確に把握して、その場所ごとに図面をかき分けたり、施工前の確認が必要になるなど、少々手間がかかり、施工に時間がかかる場合があります。しかし、詳細な図面があれば施工そのものはそれほど難しいものではありません。工事費もあらかじめわかっていれば、たいして上積みにならないでしょう。

しかし、リフォームで、和室の段差を解消するのは床下地だけでなく、建具枠、壁仕上げなど広範囲にわたって工事をしなければなりません。そうなると、工期も費用も相当かかります。6畳程度の広さの部屋で、内装をすべてやり直すのに、費用は数十万円(使用する素材などによっては100万円以上ということも)。工期は3~7日程度が目安です。

また、和室や洋室の出入り口の建具下や敷居の部分に「すりつけ」という三角形の板を取り付ける方法もあります。これは、工期も短く、費用の面でも数万円と安く仕上げることもできますが、「すりつけ」板が目立ち、見た目がよくないうえ、せっかく設置した「すりつけ」板につまずくケースも考えられます。


写真の金属製部材は、異なる二種類の床材の段差を抑えている
「見切り材」ですが、「すりつけ」もこの見切り材に近い形状です。
住宅の場合は、木製のものが使われることが多いようです

多数のコンセントを設置することは、新築時であれば1箇所数千円のアップですみますが、新たに設置するためには、床や壁をはがすか、露出配線にしなければなりません。

電気カーペットを敷かなくてもすむようにする方法として、機器が目に触れない床暖房がありますが、これも新築時なら数十万円(6~10畳程度)で可能ですが、リフォームの場合は解体費だけでもよけいにかかりますね。

階段の上り下りの安全性のために取り付ける手すりについても、壁に下地が入っていないと、壁のクロスなどをはがしてやり直さなければなりません。しかし、あらかじめ壁に下地が入っている構造なら、リフォーム時にかかるのは、手すりの部材と設置費用だけと小額ですみます。

当初は不便だとは感じなかった床の段差も、暮らしているうちに家族が高齢になったり、子供が誕生したりすることで、急に気になってくることも考えられます。また、年齢の問題ではなく、ケガをした場合のように一時的に、通常の生活に不便を感じることもあるでしょう。

そのようなことを考えると、30年後、40年後を考えずに施工して後からたくさんのお金をかけてリフォームするより、新築時に将来のことを想定して、あらかじめバリアフリーにしておくことが、長く快適に暮らせる家となるのではないでしょうか。
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