長期優良住宅/長く暮らせる家

築10年以上の家に学ぼう(1) どうする? わが家の健康診断(2ページ目)

住宅メーカーでは長く快適に暮らせるように定期点検を行っています。実際にはどんな部分をどのように点検するのか、点検した後はどうなるのか、築年数が10年以上のお宅に伺って聞いてみました。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド



◆点検が終わったら報告と提案◆

点検が終了したら、チェックシートをもとに、その結果が報告されます。さらに、普段生活していて問題点や疑問点がないかどうかなど、住まいについての相談やアドバイスについてのやりとりがなされます。

そして、点検結果によって、対処をしておいたほうがよい箇所が発見されると、いつごろまでに、どの部分に、何をすべきなのか、提案されます。

東京都・世田谷区 Fさんのお宅で伺った基礎の点検の話がとても印象に残っています。現在、世田谷区 Fさんの家は築23年なのですが、20年点検のときに、基礎コンクリートの中性化についての検査をしたそうです。

基礎コンクリートの中性化がどのくらいの進行状況かチェックするのだそうです。基礎に直径数ミリ程度の小さな穴をあけて、内部のコンクリート(粉状)をリトマス試験紙のようなもので検査しているようです。この物件では、基礎の表面に特殊な塗装をして基礎の中性化の進行を防ぐ処置をしたそうです。コンクリートは当初アルカリ性ですが、経年変化で中性化していきます。これが耐久性に関係してきます。基礎のチェックなどは素人が簡単にできることではないので、やはり専門家に正しく判断してもらうと安心できますね。

また、築10年以上では、基礎や外壁、ベランダの防水などを点検しますが、これらは建物の寿命に大きく関わってくるところでもあります。そのために、塗装の汚れや外壁にひび割れがないか、外壁や塗装の具合を拡大鏡を使って見るそうです。

将来を見越して新築時に付けておいた手すりがとても重宝しているという東京都・Fさんのお宅。築23年ですが、床がしっかりしていて、建具の開閉も問題なしだとか

◆構造躯体はしっかり、設備機器は交換しやすく◆

今回取材した3軒は、どこもとりたてて異常がなく、快適に暮らしているとのことでした。
構造躯体がしっかりした家ならば、何事もなく10年~20年が経過していくのだということがよくわかりました。どのお宅もふだんの手入れが行き届いており、住まいに愛着をもって生活している様子が伝わってきました。もちろん、壁のクロス、床や建具などに手擦れた箇所があったりはしましたが、かえってそういったことが住まいの歴史を感じさせ、味わいとなっている気がしました。

また、3軒のお宅に共通しているのは、外壁の塗り替えをすませている点。再塗装しているためか、どのお宅も事前に聞いていた築年数より、ずっと新しく見えました。耐久性を維持するという面だけでなく、美観という側面からも、10年~15年程度を目安に再塗装する必要がありそうです。そして、これが資産価値を維持する、高めるということにつながるのでしょう。

毎年、年末の大掃除のときには、デッキブラシを使って玄関ポーチの庇部分の汚れを落としているという東京都のKさんのお宅はとても築11年には見えません

築19年の東京都・豊島区 Kさんのお宅では、築18年のときに外壁の再塗装をしたそうですが、再塗装直前は、手で外壁を触ると白い粉がつく現象(これをチョーキング現象という)が見られたとか。こういう状態になったら、塗り替え時です。

また、構造躯体がしっかりした家でも、設備機器は家より寿命が短く、交換する必要がでてきます。実際に、東京都・Kさん(築11年)のお宅でも、東京都・豊島区 Kさん(築19年)のお宅でも、エアコンや給湯機を交換したり、電動の窓シャッターをオーバーホールしたという話を聞きました。

特にシステムキッチンやシステムバスなど水まわりの設備機器は、ここ10年、20年でものすごく進歩していますので、リフォームしたいという要望も高いと考えられますが、そのときに、機器の入れ替えがしやすいことは、長く暮らせる家にとって必要条件といえるでしょう。

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