どこからか雨漏りが…
Nさんのご近所のあるお宅、仮にAさんとしましょう。Aさん宅は、震災前に外壁の補修をしたそうです。震災直後、「震災前にペンキを塗っておいてよかったと思う。そうでなかったら、外壁が剥離したり、ひびが入ったかもしれないから」と、Nさんに話していたそうです。ところが、しばらく経ったある日、Nさんは、Aさん宅に足場かかかっているのを見ることになるのです。そして、また何年かすると、再び、Aさん宅に足場がかかっているのでした。
不思議に思ったNさんは、Aさんに聞いてみました。「どうしてそんなにペンキを塗らなければいけないの? 震災でも大丈夫だったんじゃなかったの?」と。Aさんの答えは「雨漏りするんだけれど、それがどこからかなのかわからないから…」というものでした。結局、Aさん宅では、震災前の外壁の塗り替えを含めると「家を1軒建てるくらいお金がかかった」そうです。
震災から得た教訓
その話を聞いたNさんは「みかけは大丈夫に見えてても、半壊と認定されたら根本的に手をいれないとだめだし、場合によっては、家をつぶさないとダメなケースもあるんだな」と思ったそうです。
Nさんは、こうもおっしゃいます。「一部損壊でもそんな状態だとは思わなかった。壁の中に隠された柱がどうなっているか…。家の本当のダメージはそのままにして外壁を塗っているだけでは、また地震がきたら、大丈夫だという保証はないだろう」。
「補修するのに、家1軒建てられるくらいお金がかかったということは、それだけのお金がむだになったということだ。最初の建築費が安かったとしても、結局もう1軒家を建てているようなものじゃないかと。そのうえ、新築なら次の震災は乗り越えられるが、補修した家がどこまで耐えられるのかわからない。Aさんは不安をかかえたまま、これから暮らしていかなければならないんだ」とNさんは思ったそうです。
「家は倒壊せず、生命を守るのも大切だが、震災後も安心して暮らせないと意味がない」。これが、震災を乗り越えて得たNさんの教訓でした。
地震の際、ほとんど被害のなかったNさん宅。でも、玄関前のタイルの目地に入ったひびは、地震がNさんの家を襲ったことを証明しているかのようです。赤い丸で囲んだ部分にひびがみられます |
生き残るだけでは不十分?!
Aさんの家は、震災を乗り越えたかに見えても、深い痛手を負っていたのです。こういった家は、Nさん宅の周囲にたくさんあるようでした。そして、これらの家は、また別な問題を抱えいました。それは、家の価値が著しく低下してしまったということです。もし、家を売却しようとしても、売却価格に大きな影響があるでしょう。
震災を体験したNさんは「耐震構造になっていないと中古住宅として売買できなくなる」とまで言い切ります。そして、耐震性能は、1回の地震を生き残るだけではだめだともおっしゃいます。これは、余震に耐えきれず倒壊した家を見てきたNさんだからこそ、言えることなのではないでしょうか。
ちなみに、新潟中越地震では、本震から1カ月経った11月22日までに、マグニチュード5以上の余震回数は25回、体に感じる余震は計約800回に達しています。
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