住宅工法/耐震住宅・住宅工法

家は無事でも人が死ぬことも!? ー阪神・大震災編ー(2ページ目)

耐震性の高い家なら大地震があっても、人命を守ることができるでしょう。しかし、地震対策はそれだけでは不十分。家具の固定とブレーカーが家の中の安全性のカギを握ります。被災者の方の話をもとに詳しく説明しましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド


残された家を襲う通電火災

もうひとつの大きな危険、それは火災です。「わが家の近所で家事がでなかったのはよかった。家が大丈夫でも、燃えてしまっては…。だから、うちは地震保険はやめたけれど、火災保険には入っています」とNさん。普段と違って、地震時の火災が怖いのは、すぐに消防車が来られないこと。周囲の人も消火活動に協力できないだけでなく、最悪の場合、家具などにはさまれて、火事現場から逃げられないこともあるのです。

外観

地震発生直後、Nさんの家からも、隣家からも火災が発生しなかったのは幸いでした

神戸市消防局によると、「地震直後から火災が多発し、火災による被害は、全焼6,965棟、半焼80棟にのぼる」と報告しています。また、阪神・淡路大震災で発生した火災の6割以上は、通電火災といわれています。通電火災とは、大地震が発生した場合に、ストップされた送電が復旧し送電を開始したときに家屋内の断線箇所や、スイッチが切られていない電気ストーブやアイロンなどの家電製品が原因で出火する火災のことです。

Nさんも「耐火性に優れた外壁の家でも、家の中から燃えたらダメですよね。だから、地震のときはブレーカーを落としておかないと。避難のために、家を離れるときは必ず落としたいですね」と、通電火災の危険性を訴えています。現在では、地震対策が施されたブレーカーが販売されており、後付けできる製品も市販されています。

飲料水と下水用の水を用意しておく

さて、家が無事で住人が無事なら、すぐに普通の生活がおくれるでしょうか。震災当日に自分の布団で眠れたNさんのお宅でも、被災後の生活は大変だったようです。

「一番大事で、すぐに必要になるのは水。飲み水と下水用が重要でした。わが家の場合は、たまたま近所の湧き水を常に30リットルのポリタンクに3つほど汲んでおく習慣があったので、それを使えたぶん、よかったほうですね」と、Nさんの奥さまはおっしゃいます。飲料水だけでなく、トイレの使用後に使う水の確保にも困ったそうです。「浴槽の水はためたままにしておいたほうがいいですよ」。これは、Nさんの奥さまが地震から得た教訓だそうです。

幸い、Nさんのお宅の前には小川があるので、洗濯やトイレの水は、この川の水でまかない、飲み水は給水車や近所の井戸水を利用しました。また、お風呂は、復旧している銭湯をあちこち探して回ったり、近くの会社の寮のお風呂を使わせてもらったそうです。

お風呂に入れるのは2カ月後?!

階段

Nさんの家の近くにあった公園に続く階段。コンクリート製の階段ですが、地震によってできた大きなひびが残っていました

地震対策として大切なのは「とにかく自衛」とNさん。「日ごろから地震が起きても大丈夫なように、避難経路を確認して、最低限の飲み水と食べ物を用意しておくことが大事」とも。ライフラインの復旧には、早くても2日、場所や状況によっては1カ月以上かかることもあるので、その間の生活を考えておくことがポイントだそうです。

Nさんが自宅のお風呂に入れたのは、被災して2カ月半たった後でした。ガスの復旧が神戸市からだったので、西宮市の東部にあるNさんのお宅一帯は、一番最後だったからです。震災に備えるなら、少なくとも1カ月以上はガスなしの生活を想定しなければならないということです。
 

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