長期優良住宅/長く暮らせる家

子育て後の夫婦が心地よく暮らせる家とは?(2ページ目)

将来の住まい方を知ることができれば、長く快適に暮らせるはず。築年数を経過した夫婦の過ごし方を明らかにした調査をもとに長く暮らせる家の間取りを考えてみましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

夫と妻が居心地に求めるものは・・?!

子育てを終えた夫婦は、個室がある場合でも、リビングダイニングと同じ空間で過ごす時間が多いということを、前ページでお話をしました。ところが、リビング(またはダイニング)の中でも、夫が居心地がよいと感じていつもいる場所と、妻が同じように感じる場所には、少し違いがあるようです。

多くの家では、ダイニングテーブルやソファで、夫や妻、子供など、家族がたいていどこに座るか、なんとなく決まっているものですよね。それと同様に、夫、妻ともに、それぞれ居心地がよいと感じる場所が居場所となっているようです。下の表は、夫と妻がそれぞれの居場所として居心地を決める要素です。夫と妻で項目は共通していますが、順位が違っているところに注目です。

夫 順位 妻 
TV  1位 外・眺め 
外・眺め  2位 TV 
落ち着く  3位 落ち着く  
くつろぐ  4位 くつろぐ  
新聞・本  5位 新聞・本  
資料提供:ロングライフ研究所

上の調査結果を見ると、妻は眺めのよい場所が好きだということがわかります。それに対して、夫の居心地を決める要素は、テレビがよく見られるかどうかがトップ。さらに、この調査では、夫と妻の具体的な居場所を訪問による聞き取り調査をしています。それによると、妻は空間の中で全体を見渡せる場所を好み、夫は妻が動き回るときの動線に邪魔されない落ち着ける場所を好む傾向があるとされています。

つまり、妻は自分がいる空間すべてを見渡せることを好む猫タイプ、夫は、自分の好みの空間を決めて、その場所に落ち着く犬タイプと見ることができるわけです。妻は、リビングダイニングの空間を見渡せる、キッチンに近いダイニングテーブルで、読書をしたり手芸を楽しみながらも、夫や来客など家の様子を把握できることを好む傾向にあり、夫はひたすら自分の好きなことに没頭できる場所を好むということです。この結果は、家事をしながら趣味を楽しむ、女性ならではの行動だなあと納得できます。

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声をかければ会話ができるくらいの距離が心地よい

将来の変化に対応できることが大切

さて、このように家の築年数を経たときに、夫婦がリビングダイニングで多くの時間を過ごし、その居心地を高めるには、「つかず離れず」が可能なある程度の広さが必要なことなどがわかってきました。建築計画・環境行動研究の専門家によると、無理なく会話ができる限界距離は3mなのだそうです。この程度の距離なら、お互いの独立性が保てるのと同時に、「お茶でもいれましょうか」なんて会話も成り立ちますね。

しかし、新築時に子育てが終わったときのことを考えて、ことさら広いリビング・ダイニングをつくってしまう必要はないでしょう。後々簡単なリフォームで、実現できるようにすれば、新築時に必ずしも完成していなくてもよいと思います。

以前、取材で訪問したお宅では、ダイニングとリビングを区切っていた造り付けの家具を取り払い、見通しをよくし、リビングの壁面に収納を設けるリフォームをしたそうです。その際、リビングの一角にちょっとした書き物ができる机を置きました。この結果、奥様はダイニングで本を読んだり、愛犬と遊んだり。ご主人はリビングのソファでテレビを見たり、机で家に持ち帰った仕事をしたりすることが多くなったといいます。このようにちょっとしたリフォームで、そのときどきの状況に対応できる構造になっていれば、不自由な生活を強いられることもなく、快適に過ごすことができるわけです。よく見かけるリビングに和室を隣接させて設けた間取りも、将来和室を取り込んでリビングを拡大することができるので、案外いいかもしれませんね。

これから新築を予定している方は、将来の生活の変化を予想したり、築年数が経ったときにリフォームできる構造であることをなどを確認しながら、家づくりを進行してください。

▼調査の詳細については「子育てを終えた夫婦2人の居場所」調査
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