住宅工法/耐震住宅・住宅工法

長く暮らす家に必要なこと(1)耐震性(2ページ目)

長く暮らせる家を建てるには、耐震性は必要なこと。でも、工務店や住宅メーカーに任せておけばいいとか、建築基準法を守っていれば大丈夫だと思っていませんか。実は、そうでもないのです。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

工法や構造に関心を持って施工会社を選ぶ

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大きな吹抜けをつくるには、耐震性を確保しておく必要があります

では、耐震性の高い家を建てるには、どうしたらいいのか。まず、工法や構造にも関心を持ちましょう。例えば、軸組工法でも、木造軸組と鉄骨軸組というように、素材も1種類ではありませんし、軸組工法を採用している会社には、構造用合板などを使って、耐震性を高める工夫をしているところもあります。素材の違いは、2×4工法のように壁で支える工法でも同様です。木の壁で支えるのか、コンクリートの壁で支えるのか、あるいは、スチール住宅のように木の代わりにスチールを使う工法もあります。

それぞれの特性を知ったうえで、自分が求める家づくりをしてくれる工法や施工会社を選ぶことが大切なのです。

当たり前のことを当たり前に

その次に大切なのは、建築基準法に沿った家づくりをし、建築確認申請通りに建てること。

なぜ、そんな当たり前のことをここで書くのか不思議に思う人もいるかもしれませんが、そうでもないのです。阪神・淡路大震災のときに倒壊した家の中には、建築確認申請の書類上では、法律を遵守していたのに、その通りに建築されていなかった家があったと言われています。昨年、建築確認申請が厳格化されたことも、もともとは耐震偽造を防ぎ、確認申請後の変更による耐震性の低下を防ぐことが狙い。それだけ、確認申請後の変更が日常化していたことを裏付けています。

間取りを考えるときは耐震性にも配慮して

工務店と間取りのやりとりをするときに、「もっと大きな吹抜けをつくりたいといったら、これ以上は無理だと言われた」とか、「この柱が邪魔だといったけれど、とれないと言われた」といった話を聞いたことがあります。なぜ希望を実現することができないのか、きちんと説明できない工務店にも責任はありますが、「この柱がとれないなら、A社と契約する」などと、むやみに複数の工務店を天秤にかけるようなことをするのは考えものです。構造にもよりますが、木造軸組などの場合は、通し柱は1階と2階に同じ場所にあり、これを動かすことはかなり難しいものです。また、構造や工法によっては通し柱が不要な場合もあります。吹抜けもキャットウォークをつくるなどの工夫により実現できることもあります。なぜ、できないなのか、荷重はどのように受け止めているのかなど、いろいろ質問してみるとよいでしょう。構造上の理由でどうしても難しいことなら、どのようにすれば実現可能なのか、代案を出してもらうのも一つの方法ですね。

素人であっても、提案された図面を見て、柱や窓、耐力壁(地震や風などの力に対抗する壁)などがどこかに偏っていないか、バランスよく配置されているかなど、確認してみることをおすすめします。そうすれば、構造の面で無理がないかどうか、構造上必要な柱や壁をうまく配置しながら、希望した空間を確保しているプランなのかどうかも理解できるでしょう。

性能表示制度なら客観的に性能を評価してもらえる

また、住宅性能表示制度を利用するというのも、ひとつの選択です。住宅性能表示制度は、住宅の性能を客観的に評価する基準が定められています。そのため、この制度を利用した家は、評価基準に基づいて、設計や施工され、それが裏付けられる評価書が発行されます。

そのほか、売却しなければならないといった場合でも、第三者にその性能をアピールすることもできるというメリットもあります。もちろん、中古住宅を購入するときにも、ひとつの判断基準になりますね。

そのほか、性能表示制度は、耐震性だけではなく、耐火性、耐久性、気密・断熱性、遮音・防音性、防犯性など、住宅性能の全般に及ぶ評価基準があるので、総合的に性能を確保したり、判断したりすることができます。

このように、今、建てられている家の耐震性はどの家も同じではありません。また、古い建築基準法に沿って建てられた住宅は、等級1のレベルにも達していない可能性があります。

例えば、現在、販売されている車にも、さまざまな安全基準があり、それをクリアした製品が販売されています。車のクラスによっても、安全基準や行う試験の違いはあるでしょうが、どのクラスの車を選ぶかは、消費者が決めることです。同じことが家の耐震性についても、言えると思います。必ずしも、どの住宅も同じではないからこそ、家を建てるときには、もっと耐震性にも注目して、その上で選んでほしいのです。長く暮らしたいのなら、当然のことではないでしょうか。

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