かっての台所では、大工さんが鴨居の上から天井一杯に天袋を付けてくれていたのが、吊り戸棚の原点といえます。そのために日本のキッチンでは吊り戸棚を天井一杯に付ける習慣が今でも残っています。1800ミリから上のほとんど手の届かない位 置に吊り戸棚を付けて、使い勝手が悪いとか収納が足りないといっているわけです。
欧米のキッチンの写真を見ると良く判りますが、吊り戸棚は目の高さ、手の届く範囲に付けています。それで初めて使いやすい収納の確保が出来るわけです。あまり下げてくると頭が当たったり、うっとうしくなったりします。自分の身長との関係や吊り戸棚に収納機能をどの程度期待するのかによって、位 置を決めるわけです。
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基準としては目の高さから10~15センチ位下を吊り戸棚の下端寸法、吊り戸棚の高さは約70センチくらいにすると使い勝手が飛躍的によくなります。
身長が160センチの方だと下端が約1400ミリということになります。 吊り戸の奥行き寸法は600ミリのワークトップの場合は扉の前面
まで300ミリ以下、650ミリのワークトップの場合は同じく350ミリ以下にすると目の高さまで下げてきてもうっとうしさはありません。750ミリ奥行きのワークトップなら400ミリ奥行きの吊り戸でも大丈夫です。
また開き戸よりも引き戸やフラップ形式の扉の方が、開いた扉が頭に当たることもないので安全だし、使い勝手も良くなります。
正面から見たときの吊り戸を付ける範囲の決定もキッチンデザインを大きく左右します。シンク前の一番作業時間の長い位
置の前面を思い切って吊り戸棚を無くしてしまい、60センチ幅くらいの縦長の大きな採光窓を設けるのも快適なキッチンづくりの解決法のひとつです。