キッチン学入門講座-その1
給気のない換気はダメッ!
生活空間の中で、これだけキッチンの大切さが認識されるようになってきたにも関わらず、換気についての誤った知識や設計がまかり通り、中には消防法で規制されている法規を守ろうとしないキッチン現場さえ横行しているのが実態です。このような現場が「ちょっとオシャレだから」とか「スタイリッシュキッチン」等と呼ばれてインテリア雑誌を飾ることも多く、安全と快適という観点から看過するわけにはいきません。
キッチン学入門講座のまず始めに、「換気」をとりあげたのは、間違えた設計や施工現場をなくし、また使い方を間違っている方々へ換気の基本知識を再認識していただき、安全で快適なキッチン空間づくりを目指そうとするものです。
換気方式の種類
建築の換気方式には、自然の温度差を利用して換気する「自然換気」と、換気扇を使って換気する「機械換気」の二つの方式があります。機械換気方式の中には給気口と排気口のどちらに換気扇を取付けるかによって3つの方式があります。その違いを簡単にまとめると下表のようになります。
分かりやすく図でも示しましたようにどの換気方式にも、必ず給気口と排気口が必要なことを忘れないでください。
■自然換気方式 | - |
換気扇は使わない | 倉庫、体育館、エコ住宅など | |
■機械換気方式 | 第1種機械換気方式 |
給気・排気ともに換気扇を使う。室内は負圧に。 | ビル、屋内駐車場、ボイラー室、キッチンなど | |
第2種機械換気方式 |
給気に換気扇を使い、室内を正圧にして、排気口を設け自然排気する。 | クリーンルームなど | ||
第3種機械換気方式 |
給気口を設け自然給気し、室内を負圧にして,排気は換気扇を使う。 | キッチン、トイレ、バスなど |
■自然換気方式
■機械換気方式/第1種機械換気方式
■機械換気方式/第2種機械換気方式
■機械換気方式/第3種機械換気方式 (キッチンの換気の基本形です)
全体換気と局所換気
■全体換気
一軒の住宅全体、マンションの一住戸全体の換気を考えて、生活空間全体を快適環境に維持しようとするのが「全体換気」です。
「全体換気」には、各部屋ごとに換気設備を設置して必要換気量を確保する「個別換気方式」、局所排気設備と各部屋の自然給気口を組み合わせる「トータル換気方式」、「24時間換気システム」で見られるような一台の換気ユニットで複数の部屋や住戸全体の必要換気量を確保する方式等があります。
■局所換気
キッチン、洗面、バス、トイレなど燃焼ガス、油煙、水蒸気、臭気などを換気扇を使って機械的に排出する方式です。今までの説明でお分かりのように必ず給気口が必要です。
■キッチンの理想的な換気は?
一般的な戸建て住宅の場合、キッチンが直接外気に面していることが多いと思います。このように直接排気のできる場合、一番排気能力の高いファンはプロペラファンです。コンロから上昇する排ガス、油煙、臭気、水蒸気を捕集するためにはコンロ巾より左右に15センチ以上幅広のフードで上部を覆います。グリスを捕集するためにグリスフィルターを取付けますが、コンロからグリスフィルターまでの距離を1メートル以下にすることが建築基準法で、80センチ以上離すことが消防法で各々決められています。
集合住宅などに多いキッチンのように直接外気に面していない場合は、シロッコファンを組込んだレンジフードを使いダクトで天井裏を通して、外壁までもっていき排出します。レンジフードが吸わないという指摘を受けることがよくありますが、このダクトの長さと曲がりの回数が排気能力に大きな損失を与えるのが大きな理由です。
もうひとつの大きな理由が、排気能力に見あっただけの給気口が設けられていない住宅が非常に多いことです。キッチン設計の一番大切なことは、給気口をキチンと設けることと、使用者はガスレンジの使用中は、寒いからと言って燃焼空気の取り入れ口でもある給気口を絶対に閉じないようにすることが一番大切です。
もうひとつ大切なことは、レンジフードだけではキッチンの排気をまかなうことはできないということです。そのためには上の図のようにキッチン空間全体を換気できる全体換気のための天井組込み換気扇を必ず設けるようにしてください。
キッチンから出る熱や臭いはコンロからだけではありません。調理中にフードから漏れてしまう蒸気を目の当たりにすることも多いと思います。そのためにも必ず全体排気と局所排気を組み合わせるようにしてください。
引き続いて、キッチン換気の簡単な知識を連載したいと考えています。ご期待ください。