アールヌーヴォーといえば、植物や昆虫など自然をモチーフにしたガラスの照明ランプなどの工芸品が有名ですね。どこかで一度は目に触れていると思います。実はアールヌーヴォーの誕生の地はベルギーです。首都ブリュッセルには、アールヌーヴォーでデザインされた建物が数多くあります。その中でもヴィクトール・オルタのアトリエ兼住まいが、美術館として公開されています。数年前にブリュッセルでオルター邸を訪れた時の感動をお伝えします。
1890年代から1910年ころまでに、ヨーロッパを中心に室内装飾や家具の新しい美術運動が起こり、曲線を主流とした前衛的なデザインは、のちにアールヌーヴォー(新芸術)と呼ばれるようになりました。イギリスのウィリアム・モリスのアーツアンドクラフツ(美術工芸運動)の影響を受けて、新しい生活様式の中に新しい美意識を展開する運動といわれています。
ブリュッセルの市街地、石畳の狭い道の住宅街、その一角に並んでいます。美術館といっても意外にも小さく、そのまま通り過ぎてしまいそうな建物です。外観はシンプル、わずかに2階のバルコニーの手摺りに曲線が使われています。
オルターは鉄やガラスなどの新しい素材を使い、それまでは無かった新しい装飾スタイルで建物の内部を埋め尽くしました。オルター邸の中心部は吹き抜けの階段、ため息の出るような曲線美の螺旋階段を前編で紹介します。
小さなドアを開けると狭い空間にクロークと階段があります。ここからオルターの絢爛な世界がはじまります。天井や階段の手摺り、目に映るもの全てが装飾で埋め尽くされています。
階段を一歩一歩上がることに、吹き抜けの上部ガラスから洩れる光りが降りそそぎます。その空間に浮かびあがるみごとな壁面の装飾には、ただ目をみはり歓喜の声をあげそうになりました。
全てが丹念に創り上げられた工芸の技、鉄材がまるで生き物のように曲線を描きだしています。
ステンドグラスは1880年頃アメリカ・ティファーニー&ラファルジェが開発した種類で、「American glass」と呼ばれ、この家の雰囲気をよく表しています。
階段室を覆う最上部のステンドガラスは、光線の加減で複数の色に変わり、その不思議空間が壁のミラーに映され永遠に続きます。
<関連サイト>
アールヌーボーの館ヴィクトール・オルタ邸の全貌:2
美しきアールヌーボーを探る中編
アールヌーボーの館ヴィクトール・オルタ邸の全貌:3
美しきアールヌーボーを探る後編
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