建物に適した換気プランが必要に
住まいにおける換気はとても重要です。昔に比べて、気密性が優れる現在の住宅の場合、不十分な換気では湿気による結露が生じやすく、建物の老朽化を早めてしまうケースも。また、新鮮な外気を取り入れにくく、汚れた空気が室内に滞留してしまい、暮らす人の健康に影響を及ぼすこともあるかもしれません。実際に家づくりを進める中では、建物に適した具体的な換気計画は、設計担当者等によって提案され、確認することになるでしょう。プランニングには、専門的な知識が必要ですし、難しい面もありますが、大まかな内容については、施主として知っておくことも大切です。
換気設備の設置は、シックハウスの対策のひとつ
目がチカチカしたり、喉が痛くなったり、吐き気や頭痛などの症状があらわれる「シックハウス症候群」。その原因のひとつとして、住まいに使われている床・ 壁・天井材といった建材や家具、生活用品などから発生する化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど)が挙げられています。こうした「シックハウス症候群」対策のため、建築基準法では、化学物質の発散量の少ない建材を使うこと、そして、換気によって室内の化学物質の濃度を低減させるため、原則としてすべての建築物(一部の気密性が低い住宅を除き)に機械換気設備の設置が義務付けられています。
たとえば、住宅の場合では、換気回数0.5回/h以上(1時間に何回外気と入れ替わるかを表す)の機械換気設備の設置が必要。つまり、1時間当たりに部屋の空気の半分が入れ替わるような計画が必要ということになります。
換気の種類と特徴
そもそも換気とは、部屋の中の汚れた空気と新鮮な外気を入れ替えること。屋外の空気を取り入れ(給気)、屋内の空気を追い出す(排気)ことです。日常の暮らしの中では、「窓を開けて新鮮な外の空気を取り入れる」「キッチンやトイレの換気扇を回して、汚れた空気を外に出す」などが身近なものでしょう。換気は下記のように、いくつかに分類することができます。■換気を行う範囲 「局所換気」と「全般換気」
換気をする範囲によって、「局所換気(局部排気)」と「全般換気」に分類することができます。キッチンやトイレ、浴室など住宅の一部分での換気が「局所換気」、住宅全体の換気は「全般換気」と呼ばれています。
■換気方法 「自然換気」と「機械換気」
換気の方法では、「自然換気」と「機械換気(強制換気)」に分けられます。「自然換気」は、自然の風や温度差などにより室内の空気が入れ替わることで、換気量は一定しません。「機械換気」は、換気ファンなどの機械によって強制的に給排気を行うもので、換気量を確実に確保できるメリットがあります。
■「機械換気」の運転方法 『連続運転』と『間欠運転』
前述の「機械換気」は、その運転方法によって、常時の汚れ、臭気の発生源(主に居室など)を換気する「連続運転」と、一時的な汚れ、臭気の発生源(キッチン、トイレ、浴室など)を換気する「間欠運転」とに分類することもできます。
シックハウス対策には、「全般換気」「機械換気」「常時連続運転」
シックハウス対策として換気を考えると、住宅全体の化学物質の濃度を低減させるために、「全般換気」で、確実に吸排気できる「機械換気」を行い、いつでも新鮮な空気を確保することができるように「常時連続運転」をするプランニングが必要ということになります。「機械換気」の方法には3つの種類がある
前述の換気方法による分類の「機械換気」は、換気ファンなどの機械を設置する方法。換気ファンは、給排気の両方か、いずれか一方に必要となりますが、その設置の仕方、仕組みによって、第1種、第2種、第3種の3つに分類することができます。機械を用いて空気を計画的に入れ替え、新鮮な空気を常時維持する、いわゆる「24時間換気システム」などは、この機械換気設備になります。■第1種換気 給排気いずれも換気ファン
給排気ともに換気ファン(・機械)を用いて、強制的に行う換気方法のこと。給排気量を確実に確保するには適しています。
空気の流れを制御しやすいので、気密性の高い建物に適しており、戸建て住宅・集合住宅ともに用いることができます。熱交換型を取り入れるケースもあります。
■第2種換気 給気は換気ファン、排気は排気口
給気は換気ファンで、排気は排気口から自然に行う換気方式。ファンで強制的に給気し、押し込まれた空気によって室内にある空気が排気口から自然に排出されます。
「押込み換気」、「押込み方式」ともいわれます。外気を入れにくくするクリーンルームなどで用いられ、一般住宅ではあまりみられません。
■第3種換気 給気は換気口、排気は換気ファン
排気は換気ファンで強制的に、給気に換気口(自然給気)を用いるもの。「吸出し換気」ともいいます。排気が機械換気なので、湿気が壁内へ侵入しにくい特徴もあります。
トイレやキッチンなど、臭気や熱気、汚れた空気が発生する場所に排気ファンを設置し、給気は個室や寝室などの新鮮な空気を必要とする場所に。住宅の気密性能によって、給気量が変化することもあります。
一般的な住宅に用いられるのは、「第1種換気」と「第3種換気」
いずれの換気方法もメリット・デメリットがあり、設置する地域(寒冷地や温暖地など)によって、適する方法が異なる場合もあります。また、ハウスメーカーや工務店によっても、取り入れるシステムが違うこともあるでしょう。依頼先選びの際には、換気や空調に関して、どのようなシステムが標準なのか、そのシステムを取り入れる理由や費用、メンテナンスなども含めて、確認し、説明を受けておくことも大切です。【関連記事】