事件の内容
原告W夫婦は1階は鉄筋コンクリート造の駐車場で、2、3階が木造の住宅に住んでいる。隣の家が建て替えることになり、解体工事が始まった。工事が始まってから度々振動があり、外壁のタイルにひび割れが生じていた。解体業者に工事方法の改善を申し出たが、元請の工務店からは返答がこないままに作業が続けられた。結局何の説明もなく工事は終了し、再度外壁を点検してみたところ、3階の外壁タイルにはいたる所でひび割れが見つかった。W夫婦は深刻な被害を被ったとし、ひび割れに対して建設会社、解体業者、建築主を被告とし、損害賠償請求を裁判所に訴えた。
原告の主張
被告らは工事着工前に地質調査をして含水量の多い柔らかい地層構成と知っていたにもかかわらず、それに応じた工法を行わなかった。原告の被った損害は3000万円に及ぶ。
被告の主張
原告W邸の建物は耐震性が不十分である。1階と2階の間に積層ゴムが入っておらず、2・3階部分の外壁は大きなタイル貼りであるにもかかわらず伸縮目地が設けられていない。ひび割れは、タイルの材質と経年変化から生じたもので、解体工事に伴う振動が原因ではない。原因は建物構造にあるため、過失相殺されるべきである。
建物鑑定の結果
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裁判所の判断
被告らは解体時に相当の振動を発生させたと推察できる。また原告Wの建物はピロティの剛性や振動を吸収する性能が欠落している。このことから過失相殺の割合は5割相当である。したがって1500万円を原告Wに支払いなさい。