注文を受けて野山に走る
発行しているのは「徳島上勝彩情報」。これを全国に向けてFAXしています。今は何が最盛期か、残量はいくらか。珍しい山菜を知らせ利用法まで紹介しています。又、店頭での販売方法も提案する。その上で注文を受け付けるわけです。FAXを流すのは市場だけではありません。農協に届く全国からの注文を「彩」会員となった農家にもFAXします。農家に朝の挨拶から始まり、季節や天候の話、行事の話題。高く売れる商品の出荷の仕方やねぎらいの言葉、成功談と失敗談など。農家からの質問や相談にも、丁寧に応じる。FAXというコミュニケーションの手段が、会員の心をつなぎ、信頼関係を醸成しました。
明日までに何がどれだけ必要とFAXが届けば、会員農家は一斉に畑や山に走り収穫して集荷場に持ち寄ります。だから旬を外さない市場の要請に応えられるわけです。
現在はパソコンを各家庭に導入しました。それも高齢者向きの仕様に業者特注で作らせたもの。だから70歳、80歳を超えたお年寄りでも扱えます。そこでは市況だけではなく、各人の出荷状況や売上げも示されます。これならお互いの競争心もあおられ、経営感覚も身に付くし工夫も出てきます。
冬でも紅葉したモミジ葉を出荷するために、ハウスの中でモミジを育てる農家がいます。
山採りしか無理だったシュンランを鉢に植えかえてハウス栽培に成功した人がいます。
新品種の葉を試すため植林するお婆ちゃんもいます。
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続きを知りたい方は、田中淳夫氏著「田舎で起業!」(平凡社新書刊)をお読みください。
田舎で起業!の著者である 田中淳夫氏は、つまもの産業の成功の秘訣ついてこう語っています。
「原動力になったのは、つまものというアイディアや料亭通いのような営業努力の結果であることは言を俟たない。それに加えてきめ細やかなネットワークを構築したこと。情報のやり取りを重要視したこと。これこそがYさんの仕掛けたつまもの産業を成功に導いた秘訣だと思う。そしてこの成功は、一事業の成功で終わらず、山里全体を元気にした。お互いが切磋琢磨することから活力が生まれ、交流も盛んになる。老人は自分の知恵や技術に自信を持ち、充分食って行けるとなれば後継者もうまれる。地域づくりにつながったのである」
さて、Yさんの田舎でベンチャー物語。参考になりましたか?
自然の中で働く仕事に憧れている人が増えています。しかし、生活するためにはどうしても収入が必要だし、仕事の種類によって地域選びも変わってきます。地元企業への転職、新規就農など、それぞれの事情により働くスタイルは様々。夢をかなえる、あなたにピッタリの「起業」を見つけませんか。日本の田舎が、あなたの挑戦を待っています。
*参考図書:「田舎で起業!」平凡社新書
著者/田中淳夫氏プロフィール
1959年大阪府生まれ。静岡大学農学部林学科卒業。出版社、新聞社勤務を経て、フリーランスの森林ジャーナリストに。主な著書に、『日本の森はなぜ危機なのか』平凡社新書、『伐って燃やせば「森は守れる」』洋泉社、『「森を守れ」が森を殺す』新潮OH! 文庫、『里山再生』洋泉社新書y、『チモール知られざる虐殺の島』彩流社など。
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