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なぜ不動産業者はしつこいの?

住宅の購入にあたり、ふと感じた疑問にガイドがお答えするコーナーで最初にいただいたご質問は「どうして不動産業者の人はこんなにしつこいのですか」というものでした。(2015年改訂版、初出:2004年9月)

執筆者:平野 雅之


以前、このサイトをご利用いただいている方を対象に「住宅購入に関する疑問や質問」を募集したところ、最初にいただいたのが不動産業者の営業姿勢に関するものでした。



question
先日、新聞に折り込まれていたチラシを見て不動産業者に問い合わせたところ、それから毎日のように営業の人が自宅に来たり、電話をしてきたりして「この物件はどうですか」「明日見に行きませんか」などと長い時間、話をされます。最初は熱心な人だと思っていたのですが、だんだんと怖い気持ちにもなってきました。どの会社も同じというわけではないでしょうが、どうして不動産業者の人はこんなにしつこいのでしょうか?
(埼玉県 NORIKOさん 30代 女性)



answer
「熱心」なのと「しつこい」のとは紙一重のところもあって難しいのですが、やはり度を越えて熱心なのは「しつこい」と思われるでしょうね。

営業が「しつこい」のは、何も不動産業者だけの話ではなくどのような業界でも同じかもしれませんが、不動産業者の販売する商品(物件)がずば抜けて高額なだけに、お客様の警戒心も強いようです。

以前に比べて強引な営業は次第に影を潜めてきているようですが、まだ一部には「押しの一手」を信条とする営業も残っていることでしょう。

もちろん、会社によって営業スタイルは異なります。強い調子の営業ばかりでなく、おとなしい営業、紳士的な営業、お客様本位の営業などさまざまですから一概にはいえませんが、たとえばチラシを数多く新聞などに折り込んでいる「媒介業者」のケースを考えてみましょう。

なお、チラシを折り込んでいる媒介業者のすべてがこうだというわけではありません。

営業マンのイラスト

「熱心」と「しつこい」が紙一重のところもあって難しい。お客様の受け止め方次第の面も

チラシを作成するためには、その原稿作成の段階からかなりの手間が掛かっていることはもちろんですが、その版下作成費用、印刷費用、物件写真の費用、さらには新聞1部ごとにいくらという折り込み費用なども必要です。

そうすると片面カラー、片面単色のチラシを印刷に回して新聞に折り込むとき、ちょっと大掛かりにやれば数百万円、新築マンションなどで大々的にやれば1千万円以上の広告経費が掛かる場合もあるのです。

仮に中規模の媒介業者が100万円の経費を掛けてチラシを折り込み、10件の反響(お客様からの問い合わせがあり、相手の名前や連絡先を聞き出せた件数のこと)しかなかったとしましょう。

すると、営業にハッパをかける立場の課長や部長などは「このお客様には既に10万円のコストが掛かってんだ!ちゃんと回収しろ!」などと言い出すことになるのです。

不動産業者側の勝手な論理でしかありませんが……あくまでも一例です。

なお、最近ではチラシをやめてインターネットで集客する例も多くなっていますが、広告費や人件費を含めて「集客コスト」が高いことに変わりはないでしょう。

ところが、お問い合わせのあったお客様がすべて購入するわけではなく、中には初めから買えない人、他社で決まってしまう人、いつまでも物件を決められない人などもいるわけで、実際に契約までこぎつけて媒介手数料をいただけるお客様は、かなり限られた数でしかありません。

その中で広告経費を回収し、営業経費を捻出し、人件費や利益を稼がなければなりませんから、「買える」と見込んだお客様は何が何でも……という営業スタイルが生まれてしまうのです。

また、反響のあったお客様は、何人もいる営業担当者のうち誰かに割り振られますが、ある一人の営業担当者に与えられたお客様が、実際には物件を購入できないようなお客様ばかりだったときには、その営業担当者にとって死活問題ともなりかねません。

歩合給のケースもあるため、少しでも脈のあるお客様には是が非でも購入していただかないと、自分の給料が出ないということもあるのです。

あまりしつこくすれば、お客様に逃げられるのがオチなのですが、営業担当者から上司への報告が不十分なとき「しっかりとフォローができていないのではないか」と、上司の命令で無理やり電話などをさせられるケースもあるでしょう。

最近では営業が強引になるのを避けるため、WEBサイトを効率的に使って広告経費を抑えているケースや、お客様本位の営業スタイルを確立している会社もあるようです。要はその不動産業者の営業姿勢の問題です。

その昔、夜にお客様の自宅を訪問し、契約書に判を押すまで帰らなかったり、早朝に訪問して契約書に判を押すまでお客様を会社に行かせなかったり、という営業をしていたところもあったそうです(私がこの業界に入る以前の話です)。

一部の業態では最近でもときどき問題が発覚しているものの、一般の実需向け物件の媒介でそれほど強引な話は聞かれなくなっています。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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