建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

田井幹夫さんの縦横に広がる家 お花茶屋の黒い箱(2ページ目)

「中居ハウス」でご紹介したアーキテクト・カフェの田井幹夫さんがお花茶屋につくった家「黒い箱」を見ました。柱のない空間が横への広がりを感じさせると同時に、縦への広がりもある1軒です。

執筆者:坂本 徹也

2階に上がると、そこは完全な一室空間。ですが、その一画が掘り炬燵のように低くなっていて、そこにキッチンがつくられています。一段低くなったキッチンというのも、やはり土間のイメージなのでしょうか。収納はほとんどが壁収納か、階段側に寄せられているので、視線が完全に通る空間ですね。

キッチン以外のスペースはリビングという位置づけなのでしょうが、とりわけそういう既成の機能を割り振るのがナンセンスに思える遊びの空間になっています。そこには西側の壁に沿ってつくられた畳の部屋と、南面につくられた3階への吹き抜けが付いています。つまりここには、水平方向への広がりのほか、垂直方向へも視線が広がっていく仕掛けがあるということです。

 

その吹き抜けの上、3階部分は吹き抜けに面して2つの部屋が南に面して並んでいました。ひとつは主寝室、もうひとつは子ども部屋。特徴的なのは室内の壁が全面、黒く塗られた木であること。南面の吹き抜けが大開口部を持っていることから、室内の光線は強すぎる。だからそれとのバランスを取る意味でも、室内が「黒」ということなのでしょうか。なるほど気が休まります。

もうひとつおもしろいのは、開口部の外に設けられたグレーチングがベランダの役割を果たしているわけですが、そのグレーチングが室内の吹き抜け側にも張られていること。もちろんメンテナンスを考えてのことなのですが、それがこの吹き抜け部を一種の外部空間のように見せている。 寝室の先には廊下、その先に吹き抜け、そして開口部があって外にベランダ---というシークエンスの変化が楽しめるわけですね。これは室内に広がりを生むみごとな仕掛けと いっていいでしょう。
一見、直線と直線の組み合わせでできた単純な家なのですが、各階ごとにいろんな愉しみ方のできる1軒でした。

設  計:田井幹夫/アーキテクト・カフェ
       http://www.architect-cafe.com/
構造設計:岡村仁/空間工学研究所
施  工:前川建設
 ●敷地面積:100.01m2
 ●建築面積:43.60m2
 ●延床面積:125.27m2
 ●階  数:地上3階
 ●構  造:鉄骨造

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