建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

鈴木信弘さんの「意地の都市住宅」 崖地の下に建つ上池台の家

建築家と建て主を結ぶarea045のマッチングによって出会った両者が挑戦して完成させた「上池台の家」。崖地の下に建つそれは、ほんとにここは都心なのかと見まがうエアポケットの一画にありました。

執筆者:坂本 徹也

鈴木信弘さんの「意地の都市住宅」は
不動産屋さんが見放した坪50万の異形の地に建つ


建て主を建築家に紹介するコーディネート会社はいろいろありますが、中でも異彩を放っているのが横浜をメインターゲットにして業務を展開しているarea045です。
その特徴はザ・ハウスなどに近い、純粋に建築家を紹介して契約が成立するまでというマッチングのみを行う会社だということですね。2001年に業務を開始した同社ではすでにいくつかの家づくりにかかわってきましたが、今回はその中の1軒「上池台の家」が完成したと聞いて見学させてもらうことにしました。

建て主と建築家が難度Aクラスの土地に挑戦して完成させたという「上池台の家」。それは、ほんとにここは都心なのかと見まがうエアポケットの一画---細い私道を行った先の崖下にありました。大田区上池台の釣り堀の近く、小高い丘の中腹を走る幅1メートル強の私道(もちろん未舗装)を行くと、丘の斜面とどこかの会社の寮に挟まれた小さな土地に、それは建っています。
まさにこれは「意地の都市住宅」と呼ぶにふさわしい。ここはなんと坪50万、不動産屋さんが「誰も買わないだろう」と見放した土地だったとか。

 

細い私道と2階の玄関のレベルを合わせ、私道からウッドデッキのアプローチが掛けてあり、それを通って玄関に入る形になります。これがなかなか楽しい。眼下には庭とそれに面した1階の広いベランダが見えます。このアプローチからは、庭に直接降りられる階段が分岐しているのですが、そうしたこの家の詳細がここから一望でき、よくぞこんな場所に建てたもんだという小さな感動を与えてくれます。庭だって、よく見るとけっこう広い。まだ工事中でしたが、芝生の先には小さな池を持つ手づくり庭園の計画もあるようです。

玄関を入って、3段程度上がるとそこは2階。デッキテラスを持つリビングとダイニングがひと続きになった一室空間です。入った正面には間仕切りがわりの収納があり、その向こうには小さな畳のスペースもありました。ここは真ん中に穴が開けられ、冬は掘り炬燵を楽しめるようになっています。

 

奥まったところにあるキッチンは、壁で仕切らず、小物を置く棚を通して全体が見渡せるようになっています。またキッチンからは、裏手にもあるベランダに出ることができ、なかなか開放的な印象ですね。

床・壁・天井ともに使われているのは無垢の木。床はメープル、壁と天井は杉板とシナベニアの組み合わせ。それはまさに山荘にでも来た気持ちよさです。ここが都心であることをまた忘れてしまいそう。裸足で生活したくなる、そんな空間でした。

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