1階から3階までが一連なり!
前田光一さんの「薬師の家」のオープンハウスに行きました。西武線・新井薬師駅にほど近い商店街に面して建てられたスタジオ兼都市型狭小住宅です。
それにしてもいつもながら敷地が狭い!同じ前田光一さんに建ててもらったわたしの家も16坪(建築面積8坪)でかなりの狭小地ですが、こちらも敷地面積が43m2、建築面積が32.26m2と負けていません。こんな狭小地に延床面積91.91m2の住宅をつくるのですから、建築家の発想はやはり違いますね。
さすがに商店街のど真ん中にあるため、商店街に面したテラスにはパンチングメタルのスクリーンが貼ってありますが、それが無機質になりがちな狭小住宅に特徴ある表情を与えています。外壁はコンクリートパネルの仕上げ、コスト的にはローコスト住宅と言っていいでしょう。
中に入ると、そこは大きな土間、図面にはスタジオとありますからきっとそこは建て主さんが好きな楽器を演奏したりする趣味の空間なのでしょう。しかしこうした広めの土間はなんとなく古い民家の風情があっていい。
一段高くなった床の部分は何もない自由なスペースになっています。ある意味、同じ趣味を持つ仲間たちが深夜まで楽しめ、寝泊まりできる居心地のいい場所ですね。
玄関の左手には階段を設えた吹き抜けが3階まで突き抜けています。これがこの家にじつに開放的な空気を送り込んでいる。もちろん最上階にはトップライト。明るくて風通しがよい狭小住宅という印象は、この大きな吹き抜けがつくっているのでしょう。
階段部の壁はすべて書棚とか小物を飾るスペースにあてられ、無機質になりがちなコンクリートパネルに彩りを与えています。
2階は寝室と浴室、それに外に出られるテラスもあります。夫婦二人の生活を考えると、この広さと機能性で十分快適。そこにもこの家の広がりを演出している階段部の吹き抜けが功を奏していると言ってもいいと思います。
そして3階はちょっと夏は暑いかなと思えるほどに明るいリビング+キッチン。ここにはなぜか外部に思えてしまうほど採光のいい、階段部の最上階を利用した歩行可能なパンチングメタルのブリッジが付けられていて、内壁の書棚に気軽にアプローチできるようになっています。これがけっこうポイントが高い、限られた空間に広がりを感じさせる空間に思えました。
また、リビングのハイサイドライトからは周囲の家々の屋根が見え、それがこの家の存在する周辺環境を伝えることで、なぜかホッとする安心感を醸し出していました。
こうした一工夫も都会の狭小住宅には欠かせないことかもしれません。
■設計監理 :前田光一(包建築設計工房)
http://www.c-channel.com/c00450/
■プロデュース:村田茂廣/ちめんかのや
■構造設計 :H&A構造研究所
■施 工 :小島工務店
■構造規模:鉄骨造 地上3階建て
■建築面積:32.28m2
■延床面積:91.91m2