「お茶菓子」を食べながらの気軽なトークイベント
さて本題のイベント「アーキカフェ」ですが、第１回目の1/15は13：30と15：30の２回に分けて行われました。最初の講師は濱田昭夫さん（TAC濱田建築設計事務所）、二番手は高木恒英さん（インターセクション）です。
それにしても、「アーキカフェ」のネーミングどおり、毎回講師の建築家たちが「お茶菓子」のお土産を持ってきて、茶飲み話のようなスタイルで気軽なトークショーをすすめていくという企画はなかなか楽しいものでした。ちなみに濱田さんのお土産は正月らしく一口タイプの「お餅」、高木さんのは郷里の土浦の「蓮根サブレー」でした（どちらもなかなかGOOD）。
かんじんのお話の中身は、全部拝聴できたのは濱田さんの回だけでしたが、じつに有意義なものだったと思います。濱田さんは自分の最近作の中から「ITN住宅」と題された３軒の連続住戸を例に引きながら、自分が大切にしている設計コンセプトや、建築家でなければできない創意や工夫について話をすすめられました。けっして難解な建築用語は使わず、素人である建て主にどうすればわかりやすくオリジナルな住宅建築の魅力が伝わるかを考えながらのお話に、参加した人たちは興味津々で聞き入られていました。
「ITN住宅」は、世田谷区内に建てられた地下１階・地上２階建ての３戸続きの住宅です。濱田さんは、この連続していることを最大限に活用することを考え、隣同士が互いに50センチずつのスペースを譲りあう形で１メートルの通路を確保し、そこに光と風を呼び込むことで住人どうしの「憩いの路地」を実現しました。
また、軒先の屋根を一体化させることでデザインの統一感を生み、以前からそこにあったような町並みとの調和を図られています。しかし、一歩中に入ると、１軒１軒の様子はまるで違う。土間や座敷など和のテイストを持つ住戸があるかと思うと、中庭を中心に内部に向けての「開放感」を強調した住戸があり、茶室などの和とスチール製の階段部などのモダンを共存させたものもあって、それぞれ目を楽しませてくれます。
家には、住む人が持つそれぞれのシークエンスが生きつつ、「品」と「格」が感じられなければならないという濱田さんの主張がそのまま具現化されていました。
さらに細かい手法の話では、門から玄関までのアプローチに「内部空間へのワクワクするような予感」を感じさせるための仕掛けとか、１本１本の柱や扉にも素材を厳選し、ちょっとした凹凸にも細やかな図面を引くこだわりについての持論が展開され、こちらもなかなか参考になりました。
残念だったのは、最後にさあフリートークしましょうとなったとき、参加者たちの気持ちがほぐれて口が軽くなるには時間が短かすぎたこと。日本人はシャイですし、こうした場で「あまり素人みたいなことを聞いてはいけないんじゃないか」と思ってしまうのでしょう。
最初の一発目に自分が口火を切るのは緊張しますし、個人的な相談みたいなことを聞くのは好ましくないのではという遠慮も働くのでしょう。コスト意識を抜きにして建築家と自由に話せるせっかくのチャンスなのにもったいないことです。ほんとに自分が個人的に建てたい家の夢とか、こんな無謀な計画は技術的に実現可能なのかとか、品質を損なわずにコストはどうやって下げるのか…といった、ふだんはちょっと聞けないようなことをどんどん聞けばいいのにと思いました。
今回の「アーキカフェ」は、1/15～16、1/22～23の４日にわたって１日２回、合計８回のイベント（講師は上記のほかに鈴木利美、庫川尚益、大川直治、中村雅子、三澤護、木村俊介の各氏）でしたが、INAX銀座ショウルームでは引き続きこうしたイベントを企画していきたいとのこと。今後も春に向けて「建築家と考える 実現したい！こだわりの家づくり」とのタイトルで、SUMAIセミナーを開催していく予定だそうです。
●第５回 SUMAIセミナー 「個性的な家づくり----自分らしい空間をつくる」
２月26日（土） 13：00～15：00
●第６回 SUMAIセミナー 「かしこい家づくり----将来を見据えて」
３月26日（土） 13：00～15：00
くわしくはINAXの公式サイトをご覧ください。↓
◆INAX（ショールームのページ）
