閉じて開く家
3種の素材が渾然一体
続いて2階に上がると、ここがこの家のハイライトであることは一目瞭然。壁は階段室から続くほぼ全面のガラスブロック、片流れの屋根は自然保護林に向かってどんどん広がっていき、樹木の緑の中に飛び込んでいきます。それはここまでの光不足を補うような光の大洪水。四方八方からの光に、心までが浮き立っていく感じがします。木(床)とコンクリート(壁・天井)、ガラスの3種の素材が渾然一体となってひとつの空間を形づくっています。
キッチンは、階段側に立てられた一枚壁の向こうに設置され、リビング+ダイニングの大空間からは見えません。これはアイランドキッチンでもよかったのでしょうが、石黒さんはあえてここを壁の向こうとしました。そのためリビング+ダイニングは、生活感をいっさい排した浮世離れした空間になっています。
また、ガラスブロックの面がほとんどのため、壁に寄せて大きな家具や収納などを置くことが難しく、さあてどうやって暮らそうかと考えてしまいますねー。
ここはひとつ、思いきりバッサリと捨てるものは捨て、シンプルライフを選択する必要がありそうですが、今はそうしたスタイリッシュな生活に憧れる人も多いはずですから、需要はきっとあるでしょう。夜などはいったいどんな印象になるのか、ちょっと楽しみでもあります。
■設計監理:石黒由紀/石黒由紀建築設計事務所
■構造設計:MI+D構造研究所
■施 工 :株式会社佐藤秀
●構 造 :RC造、地下1階、地上2階
●敷地面積:105.89m2(32.07坪)
●建築面積:84.40m2(25.60坪)
●延床面積:140.23m2(42.54坪)
まさに四者四様、新進建築家たちの意欲と独創的な仕掛けが集約され昇華されたデザイナーズ住宅「意匠街」。みなさんはどうお感じになられましたか?
それぞれに個性があって楽しめた、こっちは好みだがこっちは嫌い、もうすこし統一されたコンセプトが欲しかった…など、いろんな感想があるかと思いますが、なにより有意義だったのは4人が集まってコラボレートしたこと。
こうした企画はそうそう実を結ばないでしょうが、その第一歩を踏み出したことはじつに意味のあることだったと思います。ほんと、続編が見たいものです!
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