ヴィクトリア女王、即位の3年後に21歳で結婚
ヴィクトリア女王とアルバート公の格差婚
しかしながら、そうしたカップルが円満な関係を築いていくためには、年齢や経済面、地位などが“格上”となる女性の気遣いが求められるよう。“格下”となってしまう男性のプライドを傷つけないよう接することが大切です。
そんな格差カップルのとてもよいお手本となるのが、19世紀後半にイギリスを統治し、イギリス史上最も輝かしい時代を築いたヴィクトリア女王です。
ヴィクトリア女王は1837年に18歳で即位。その2年7カ月後の1840年にアルバート公と結婚します。アルバートはヴィクトリアの母方のいとこでドイツ人。ヴィクトリアよりも3カ月年下でした。ふたりが初めて会ったのは1836年のことで、ヴィクトリアはこの時、イケメンのアルバートに好意を持ったようです。
ヴィクトリアには父方のいとこなどとの縁談があまたあったのですが、父方の叔父たちを嫌っていたこともあり、アルバートとの結婚を望んでいました。そして、1839年に再会。その後、わずか4カ月で結婚に至ったといいます。
夫への配慮から白のウエディングドレスを選択
ヴィクトリア女王と同時代のウェディングドレス(1840年頃/イギリス/シルクサテン/穐葉アンティークジュウリー美術館蔵) |
しかし、ヴィクトリアはアルバートに気を遣ったのか、女王ではなく清楚な花嫁としての装いを選びました。それが、白のウエディングドレスだったのです。当時のイギリスでは、アッパークラスの女性たちは白(といってもクリーム色に近い)のウエディングドレスを着ていました。女王もそれに倣ったというところなのでしょう。
また、頭にも女王らしい王冠やティアラは被らずに、ロウで作ったオレンジブラッサムの花飾りを着けました。白く香り高いオレンジの花は「純潔」の証と言われ、当時の花嫁が必ず身に着けるもののひとつでした。後述しますが、この時、アルバートはガーター勲章しか持っていなかったので、その点にも配慮した結果なのでしょう。
夫が引け目を感じないようにと、あえて女王らしい衣裳を着なかったヴィクトリア。ふたりの間に歴然とした格の差がある場合、それをあえて衆目にさらすようなことをしないのが、格上にいる者の心遣いといえるでしょう。ヴィクトリアのほうがアルバートにぞっこんだったという話もあり、女王の衣装を着なかったのは、女王ではなく一人の女性として愛する人のもとに嫁ぎたいという、ヴィクトリアの女心だったのかもしれませんね。
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