ちょっとした贅沢で、家で作る料理が(特にシンプルな料理が)外のご飯にも負けないくらい美味しくいただけたとき、とても幸せな気持ちになります。
わたしが普段使っている調味料の中から、とっておきの逸品をご紹介したいと思います。
椰子から生まれる優しい甘さ ~ 椰子の花蜜糖 ~
これは、タイ南部のシンハナコンという小さな村で “パルミラ椰子の花序液” だけを丁寧に煮詰めてパウダー状にした、無添加無漂白の茶色い砂糖。他の砂糖に比べてとても粒子が細かく、口の中に入れるとあっという間に溶けてしまいます。
椰子の花序:先端を切り、竹筒に差してしばらく置き、花序液を採集します |
この砂糖を知るまでは、タイサラダを作るときには同じように、椰子の花から作られた“飴状の砂糖(パームシュガーと呼ばれています)”を使っていたのですが、溶けにくく他の調味料と完全に混ざり合うまで時間がかかってしまうのが少し気になっていました。しかしこの花蜜糖を知ってからは、美味しいですし調理時間も短縮されるとあって、もっぱらこれ一辺倒になりました。使いやすくて本当に便利です。
それに無精製なので、燦燦と照りつけるタイの太陽から得たカルシウムや鉄、カリウム、味覚障害に効果のある亜鉛が失われずにたくさん残っているところも気に入っています。
この椰子の花蜜糖が、シンハナコン村でどんなふうに作られているのかとても興味があったので、販売元である有限会社 ぐらするーつを訪ねたところ、製造工程を詳しく教えていただけたので、ご紹介したいと思います。
安心・安全、すべて手作業にこだわる、作り手の顔が見える花蜜糖
約20mの椰子に登り花序液を採集しているところ |
花蜜糖の原液になる花序液を採集するには、約20mもあるパルミラ椰子の頂上まで登ります。紐で竹を木に結びつけ、竹の節を頼りに裸足で登っていきます。頂上の花序にたどり着いたら先端をカットし、竹筒を差してしばらく置き、花序液を採集します。
パルミラ椰子は海の近くに育つこともあり、強い風で頂上付近が揺れるため作業はとても危険なのだそう。でも驚いたことに、命綱はつけていないのだそうです・・・。
竹筒に採集した花序液を煮詰め始めるところ(花序液の色に注目) |
大きなフライパンのような釜に原液だけを入れ、ゆっくりとかきまぜながらある程度まで煮詰めます。
その後作業場を移し、更に空気を含ませるように力いっぱいかき混ぜながら煮詰めます。(ちなみに、煮詰めるときに使う薪もパルミラ椰子)
この状態になるまで煮詰めたら火を消し、粉にするためのかき混ぜる作業にはいる(こんなに色が変わるのです) |
火を消し、力いっぱいかき混ぜて粉にします。
※2)の火加減、3)のかき混ぜ方がとても難しく、熟練の技を要する工程なのだそうです。
4)パッキング
粉になった砂糖をざるで漉し、さらに細かいパウダー状にし、計量後包装します。
いかがでしたか?何も加えない100%自然の花蜜糖が作られるまでは、熟練の技と危険が伴うのですね。
椰子から作られるこの花蜜糖、ただ美味しくて体に優しいだけではなく、実は隠された秘密があるのです。
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