Bさん「特にひかれた点は『こ~んな大雑把な人間にこれまで1度も会ったことがない!』というくらい大雑把だったことですかねー(笑)」
私「ええーっ!? 具体的には?」
Bさん「彼女のことを『ものすごいヤツだなあ』と思ったのは、小さなことだけど、傘のたたみ方なんですよ。ふつう、傘を閉じたら、こうねじってキュッキュッときれいにたたむじゃないですか。それを彼女はただ無造作に巻いてしまう。男だったらそういう奴がいるけど、女性でこういう人を見たのは初めてで‥‥。
欧米の女性は分からないけど、日本人はきちんとたたみますよねえ。それで『なんだ、こいつはぁ~!?』って思ったことで、彼女を強く認識したんです。同時に『細かいことにこだわらないんだなあ』とも思いました」
これは、国籍は関係なく彼女の性格でしょうとのことですが、Bさんの中にあった“女性はこうあるべき”みたいなものが見事に崩れ去り、なんだか「このほうが気楽でいいな」と思えてしまったのだそうです。
こういうシーンに直面した時、デート中に急に冷めてしまう男性のほうが多いような気がしますが、Bさんがこういう受け取り方をしてくれる人で、奥様にとってはラッキーだったかもしれませんね。もともと中国に関心があったBさんは、こういう大陸的な大らかさに引かれる要素もあったのでしょう。
Bさん「あとは非常に素直な点ですね。あまりすれてない。言ってることの裏に何もないタイプ。だから話していて気持ちがよかったんです」
私「奥様のほうはBさんをどのように思っていたのでしょうか?」
Bさん「(いやあ~、自分で言うのは‥‥としきりに照れながら)彼女はいい人だなと思ってくれてたようです。でも、姉の会社の先輩だし、彼女から見たらオヤジだから、遠い存在だったみたいですよ」
■文化の違い、新しい発見
私「おつきあいをしていく間に、文化を違いを感じたことはありましたか?」
Bさん「食べ物ではけっこうありましたね。餃子とラーメンは日本のものと違うし、あとお茶の飲み方も違います。日本は急須を使うけど、中国ではお茶っ葉をそのまま湯のみに入れてお湯を注ぎ、しばらくおいてから葉っぱをよけながら飲むんです。僕にとっては、急須も使わずに“なんてヤバンな!”と思うワケですよ」
「ところが、彼女は彼女で、料理というものは刻んだり小さく切られたりして、調理されて食卓に出てくるものと考えている。でも日本では肉じゃがや筑前煮など、素材を大きく切って、あるいは里芋なんかは皮をむいたままで、形が残って調理されて出てくるものが多いですよね。煮崩れしないように丁寧に作られているのに、彼女にとってはそれが“なんてヤバンな!”になる。豚の丸焼きを食べているという感覚らしいんです。たしかに中華料理では、海鮮ものや北京ダックなどを除けば、野菜は刻まれていますよね?」
なるほど、たしかに‥‥。おもしろいですねえ、こういう感覚の違い。
食べ物に関しては、Bさん、その後もいろいろ発見があったようです。
「中国に行って初めて料理の種類の多さを知りました。たとえば中国の東北地方は寒いのでいつも暖房のための火があり、そこに鍋をかけておいたので、煮込み料理が発達したんですよ。でも日本人は『えっ、中華で煮込み料理?』って思うでしょ。僕らが知ってる中華料理は炒め物が多いですから。日本で食べているメニューはほんの一部なんだということがよく分かり、知れば知るほどその奥の深さに感動しました。
中国はもともと好きだったけど、それまで料理のことはあまり知らなかったので、もっと好きになり、彼女と一緒にいることがますます楽しくなってきました」