国際結婚/国際結婚アーカイブ

アメリカ同時多発テロ事件の影で 親の差別心が子供たちに残した傷

アメリカ同時多発テロ事件の後に、日本のある町でこんなことが起こりました。親が子に植え付けてしまった「差別」の心を考えます。

執筆者:シャウウェッカー 光代

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人々の心に大きなショックを残したアメリカ同時多発テロ事件ですが、その影響でこんな事件も起こっています。
友人から聞いた話です。

日本に住む国際結婚カップルのお子さんが、日本の幼稚園に通っていました。その子の顔はどちらかというとヨーロッパ人のお父さん似でした。幼稚園ではお友達も多く、いつもみんなで仲良く遊んでいたといいます。
ところがテロ事件の数日後、驚くべきことが起こりました。同じ幼稚園に通う園児が、突然その子を襲ってケガをさせてしまったのです。
理由はこうでした。
「お父さんが、アメリカ人は悪い人だって言ってたから」

ケガをさせた子の父親は、テロ事件の原因をつくったのはそもそもアメリカだという考えで、アメリカが悪い・アメリカ人が悪いと頻繁に子供の前で口にしていたらしいのです。
幼い頭の中には、アメリカ人=悪者という図式がインプットされてしまいました。そして、同じ幼稚園に通う、日本人とは少し違う顔をした子をアメリカ人と思い、襲いかかってしまったのです。命に別状はなかったものの、すぐに病院に行かなければならないほどの大ケガでした。

この話を聞いたとき、はかり知れないショックと悲しみと怒りを覚えました。
突然襲われた子の恐怖と心の傷は、どれほど大きかったことか……。それがトラウマとなり、一生残ってしまうかもしれないのです。そして少なからず、ケガをさせた子も傷ついたと思います。お父さんの言うことは正しいと思っていたわけですから(それで襲ってしまうこと自体は問題ですが)。
幼い子供たちには、まだ判断する能力も充分な知識も備わっていません。親が話すことをそのまま鵜呑みにしてしまいます。親の差別心(人種差別に限らず)が、そのまま引き継がれてしまうのです。

国際結婚カップルの中には、子供を日本で育てたくても、イジメにあうのではないかと心配で躊躇している人もいます。日本の名前でなかったら、あるいは見た目が日本人っぽくなかったら、学校でいじめられるのではないかと気にしてしまうのです。たしかにこういう事件が起こると、それらの心配がいっそう現実味を帯びてきます。

カナダにある「グレーター・バンクーバー 移住者の会」の会長さんは、日頃よくこうおっしゃっています。
「国際結婚している人たちは異文化交流の最前線にいるんだよ」
ただでさえ大変でストレスが溜まる異文化適応というものを、家庭の中で日々実践しているのが国際結婚カップルだというのです。そこには肌や目や髪の色の違いによる差別は存在しません。
すべての人の心から差別を根絶するのは難しいことですが、せめて私たち国際結婚の親の世代は差別の心をなくし、子供たちにピュアでフェアなものを伝えていきたいと思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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