極上の「おち」を惜しみなく
私を魅了してやまないのが、上写真の
おちいくら丼。「おち」とは中落ちのこと。近海物の生のマグロの横隔膜の身を丁寧にスプーンでこそぎ取ったものです。上質な「おち」がない時にはメニューに並ばない日もあるそう。脂が程よくのった「おち」からまずはいただいてみました。舌に乗せると、体温でとろりと溶けていく心地よさ。そして上品な甘さが口いっぱいに広がります。
ねっとり、とろけるイクラ。その正体は?
ひと口で2度楽しめるのがこの丼のいいところ。もうひとつの味覚は
イクラの醤油漬けです。このイクラにも店主のこだわりが随所に感じられます。まず、使われるイクラは9~10月に穫れたものだけ。その理由とは……? 「今の時期のイクラは皮が固い。ウチでは9~10月にとれた、皮の薄いものしか使わないんだよ」(周嘉谷さん)。イクラのぷちんぷちんと弾ける食感もいいですが、その後どうしても皮が舌に残るのが気になります。こちらのものは、口に含むとねっとりと口に広がり、皮までも溶けていきました。そして、日本酒と醤油の熟れた風味が鼻から抜けていくのです。
この丼、さぞかしお高いんじゃ……? いえいえご心配なく。なんと900円なのです。
最上級の口福を得られること間違いなしです。
さて、江戸前寿司の楽しみと言えば”握り”も忘れてはいけませんよね。
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