「週に1度の特別な食事の贅沢よりも」
「毎日口にするパンとエスプレッソにこだわる、日常の小さな贅沢」…それがこの魅力的なバール&ブーランジェリーの提案です。洗練されたシンプルな内装には現代のカフェならではのセンスが光り、奥のテーブル席には、カール・ハンセン社に革を持ち込んで張り替えてもらったというハンス・ウェグナーのエルボーチェアが並んで、穏やかな表情でお客さまを迎えています。
2009年4月にオープンした「パンとエスプレッソと」は、関西を中心に幾つものカフェ、バールをプロデュースしてきた腕利きのバリスタ、國友栄一さんが手がけるお店。
「店名の『エスプレッソと』の後ろには何が続くのですか」と國友さんに質問したら、「そのあとは皆さまにおまかせします」と笑顔で答えてくれました。その見事な“バリスタ魂”と、極上のマキアートは本当に感動的! マイ・ベスト・マキアートです。
※マキアート(caffe macchiato)は、エスプレッソにほんの少しフォームミルクを注いだもの。デミタスカップで供されます。
早くそのマキアートの素晴らしさをお伝えしたくてうずうずしているのですが、まず最初にお店の全体像からご紹介しますね。
バリスタとパン職人、共通の想いは…
風が通る気持ちのいいエントランスを持つ「パンとエスプレッソと」。店内に入って右手はパン工房とショップ、左手がバールです。ガラス張りの工房の中でパンを焼いているのは、レストランミクニなどで修行を積んだ後、midi
a midi(ミディアミディ)などでシェフをつとめてきたブーランジェ、櫻井正二さん。
ふたりに共通するのは、イタリアやフランスの食文化を日本に持ち込んでそのまま押しつけるのではなく、もっと私たちの生活や嗜好に根ざした「日本に合ったバール」、「日本に合ったパン」をつくりたいという想い。
映画『イル・ポスティーノ』の舞台となったナポリ沖の島でも“イタリア修行”をした経験のある國友さんいわく、「イタリアの街角には、日本のように缶コーヒーの自動販売機がありませんから(笑)」
そんな街に住む人々が必要とするバールと、10mおきに自動販売機が並んでいる街で生活する私たちにふさわしいバールは、おのずから違うはず。
私たちが毎日、ごくささやかな贅沢として楽しむことのできるバール&ブーランジェリーこそが、「パンとエスプレッソと」のめざす地点なのです。私たちにとって、行きつけのバールで飲むエスプレッソが上等であることは、もしかしたら人生の三大幸運のひとつかもしれませんね。