2008年の京都旅行の折にたずねた一軒家、「好日居」。それはまだお店がスタートして3日目のことでした。
先日再び好日居を訪れてみて、1年という時を経て、ますます魅力的な空間になっているのを感じました。のんびりとしたペースではあっても、さまざまなお客さまを迎えてきた家というものは、確実に空気が変わるのですね。
今回の記事では、拙著『カフェとうつわの旅』でご紹介した1年前の好日居の姿をお届けします。2009年夏の好日居の姿と、店主にうかがった小さな新しい物語については、今秋発売予定の拙著で再びお伝えしたいと思います。
日々是好日
古い板塀と庭木の緑がひっそりと続く閑雅な路地。その一軒の門の前に、ほとんど目につかないほど小さく「好日居」と書かれた札が出ています。打ち水をした飛び石が視線を導いていく先に玄関の格子戸が開かれており、軒下に吊されたガラス瓶から、雪柳の枝が柔らかく身を乗りだしていました。
大正時代に建てられ、30年ものあいだ空き家になっていた民家を知人友人の手を借りてこつこつと改装してきたのは一級建築士の横山晴美さん。2008年の桜の季節に「茶の間の延長」としてそっと門を開きました。
「石も木もいただきもので、流れ者の音楽家たちが集まってきて音あわせを始めたばかりのような、まだ楽団として音楽を奏でられるかどうかわからない、そんな状況です」
と横山さんは笑いますが、板塀で囲まれた空間の中には、情趣に富んだひとつの美しい宇宙が形成されていました。
和の家具、洋の家具、中近東の絨毯やうつわ、中国の茶器と岩茶など世界中からふとした縁でこの小宇宙にやってきたものたちが、日々是好日の精神のもとに結びあわされているのです。