テーブルの上の古い抽斗をなにげなく開けたら、こんな言葉にぶつかりました。
Happiness is just like a butterfly.
If you will sit down quietly, it may alight.
なんと美しい金言。ねじまき雲で、あるアーティストが蝶をテーマに展示をおこなったときの名残りなのだそう。
静かに世界のねじを巻く
村上春樹の読者としては、店名と『ねじまき鳥クロニクル』との関連を指摘せずにはいられませんが、もともと村上春樹とは無関係に名づけられた店名。長沼さんはお客さまのすすめで『ねじまき鳥~』を読みはじめたものの、意外な類似性に怖くなり、途中でページをめくるのをやめてしまったそう。長沼さんも猫を飼っていて、ねじまき雲の裏手にもどこにも通じない路地があるのですって。
『ねじまき鳥クロニクル』にはシューマンのピアノ小品『予言の鳥』が巧みに登場し、その場面に不安を含んだ神秘的で美しいトーンを与えていますが、この曲はねじまき雲にもよく似合いそうで、想像がかきたてられます。
見えない枝のどこかで、今日もねじまき鳥は世界のねじを巻き、街角のねじまき雲では店主が古いゼンマイ時計のねじを巻き、静かにうつむいてコーヒーを淹れています。