“ラウンジ”に通じる魅力を、旬のセンスで
2009年2月28日、駅前から居酒屋が軒を連ねている細道に、カフェならではの自由でのびやかな空気に満ちた中目黒LOUNGEが誕生しました。勘どころをしっかりおさえた、という表現がふさわしいカフェ。スタイリッシュなのだけれど、決まりすぎは野暮ゆえ、居心地の良いバランスに落ち着かせてあるのです。
高架沿いのいかにも中目黒らしい雑然としたコマ切れの風景のなか、扉を開けると、贅沢な余白のある空間がひろがります。使い方にルールはありませんので、どうぞ肩の力を抜いて好きなように使いこなしてください--そんな作り手の声が聞こえるようです。
マテリアルから発想する空間づくり
「いまカフェをつくるなら、素材はステンレスではないはず」
吉祥寺の人気店A.B.Cafeなどを成功させてきたオーナーのエビサワケイジロウさんは、中目黒LOUNGEの内装をマテリアルから発想していきました。結果、木と革と石などの自然素材を主役としながら、“ナチュラル”とはまたひと味違うスタイリッシュなインテリアが完成。シンプルで心地よい空間にTRUCK FURNITUREのチェアや、インゴ・マウラーの照明がよく映えます。(写真上)
なかでもひときわ私が目を奪われたのは、尾形光琳「燕子花(かきつばた)図屏風」を模したアクリル画でした。エビサワさんの友人の画家の作品だそうですが、オリジナルの完全な模写を目指してはいないし、そもそも素材は全く違います。そのあたりに、このカフェを読み解く鍵がありそうです。
「中目黒LOUNGEは、僕が子ども時代に憧れたホテルのラウンジや談話室にインスパイアされているんです。大人たちが便利に使っていたあのかっこいい空間が、いま、どんどん消滅していますよね。そんなラウンジを僕なりの解釈でつくりあげてみました。でも、昔あったものと同じように再現しても懐古趣味になるだけ。かつてのラウンジは、当時の人々がかっこいいと感じたものを集めていたはずですから」
2009年のラウンジであれば、旬の空気をとりこみ、現時点で粋だと感じられるもので構成したい。そんな考えのもとに一から自分たちの手で設計された空間は、使いこなすほどに魅力が深まりそうな雰囲気。大人数でワインを開けてもよし、一人でカプチーノを飲みながらノートPCに向かってもよし、そして両者が違和感なくひとつの空間に共存できる“カフェの愉しみ”に満ちています。おそらくエビサワさん自身がその愉しみを熟知し、友人たちとともに享受してきたからなのでしょう。