マサラチャイとかぼちゃのプリンで読書時間
東急百貨店近くの細い路地に黒板を出しているイルカッフェ。雑居ビル3階にあるこのカフェには、オーナーの別所有さんが集めた古い家具が並び、読書にふさわしい落ち着いた空間にしつらえられています。
写真上右、ひびの入った大理石の古いテーブルと飴色のチェアは、「なぜか古い家具を買うのが好き」というオーナーのお母さまが気に入って購入し、ご実家に置いていたもの。読書するにも手紙を書くにも居心地の良い席です。
私がイルカッフェを訪れたのは、青空がひろがる平日の午後2時前。店内では女性の二人連れ、若いカップル、そしてひとりで訪れた女性がそれぞれにソファにもたれ、遅いランチを楽しみながら、おだやかな時間を過ごしていました。
観葉植物の鉢植えを並べた民家のようなベランダからは明るい空が見え、ほどよい音量で流れる名曲『三時の子守歌』が、みごとにこの場をひとつの空気に染め上げています。
いただいたのは、マサラ感たっぷりの(シナモン、ジンジャー、カルダモン、クミンなどカレー系スパイスの魅力と言ったほうがわかりやすいでしょうか)マサラチャイ(700円)。白いポットに可愛い帽子型のティーコゼーをかぶせて、冷める心配をせずに2杯分をゆっくり満喫できました。
そして、読書しながらでも食べやすいスティック状のチーズケーキが、たまたま「ただいま焼きあがったばかりで、まだあたたかいのですが……」とのことだったので、こっくりしたかぼちゃの風味が楽しめるかぼちゃのプリン(500円)。
『二年間の休暇』、『モモ』、『星の王子さま』
「以前から、カフェでは本を読むお客さまが多いので、本を読みながらでも食べやすい“読書メニュー”を作りたいと考えていました」
と、今回のリブロとのコラボレーションについて別所さんは語ります。
「フォークを使わずに食べられるようスティック状にして銀紙に包んだ『本日のチーズケーキ』(550円)は、日替わりでさまざまな種類を作っています。自家製フォカッチャにつくねや目玉焼きをはさんだ『月見つくねサンド』(850円)」は、全体をクッキンペーパーで包み、こぼれにくいよう工夫しています」
リブロのコーナーに並ぶ別所さんのおすすめ書籍は、『十五少年漂流記』の旧題でも知られる『二年間の休暇』(ジュール・ヴェルヌ)や『モモ』(ミヒャエル・エンデ)、『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)など。
「どうぞカフェで本を読みながら、日常を忘れてとっておきの時間を過ごしてくださいね」
イルカッフェのテーブルのすみには、『二年間の休暇』のとなりに『アリスの不思議なお店』(フレデリック・クレマン/写真左+写真下)という美しい絵本が並んでおり、私はしばしページの上に集められた、古今東西のお伽話を種にした小さな幻想の標本を堪能しました。ひろげた写真の左のページにおさめられているのはは、長靴をはいた猫のひげ2本、右のページにはシバの女王のまつげ1本。